2004年1月号

計装豆知識

◆◆ 変換器の仕様書の読み方について (1) ◆◆

信号変換器の精度

 
 今回から約10回にわたり、「信号変換器の仕様書をお読みいただくときの基礎知識」についてご説明します。初回は、まず「信号変換器の精度」についてです。

1.信号変換器の精度
 「精度」の語は、計測・制御の分野では、たとえばJIS Z 8103(計測用語)で、「測定結果の正確さと精密さを含めた、測定量の真の値との一致の度合い」と定義されていますが、その「度合い」を具体的に表現するための方法や前提条件注1)などを規定した統一的な規格はほとんど見当たりません。
 このため、信号変換器メーカーは、それぞれ独自の基準に基づいて自社製品の精度を表示しており、その結果、複数メーカーの信号変換器について、たとえば、「精度は±0.1%」と同一値で表現されている場合でも、前提条件などの相違により、それらの変換器の「実力」は必ずしも同じではありません。
 上記の点を考慮して、エム・システム技研では「精度」に関して、信号変換器のうち一般の変換器には、とくに『基準精度』の語を使用し、またJIS C 1111(AC-DCトランスデューサ)の適用対象製品である電力トランスデューサには、当該JISに使用されている『許容差』の語を使用していますが、今回はまず、前者の『基準精度』についてご説明します。

2.基 準 精 度
 『基準精度』は、エム・システム技研が独自に使用している用語であり、その内容は、「あらかじめエム・システム技研が定めた基準動作条件注2)の下において、対象とする信号変換器の動作を、よく管理された信号発生器と信号測定器とを使用して確認したときの、理論的出力と実際出力との差を出力スパンに対する百分率(%)で表したもの」です。
 すなわち、「基準動作条件の下で確認した、理論的出力と実際出力との一致の度合い」を示します。

3.外部要因の基準精度に対する影響度の表示
 外部要因のうち、基準動作条件から外れると基準精度に大きく影響するものについては、エム・ システム技研では、要因ごとに具体的にその程度を仕様書に表示しています。たとえば、「周囲温度 の影響」については、その影響度を「温度係数」という語で以下のように表現しています。なお、 「温度係数」の詳細については、次々回にご説明の予定です。
 直流入力変換器(形式:M2VS)の例:
  基準精度 : ±0.1%
  温度係数 : ±0.015%/℃

4.「精度」についての他社の表現
 エム・システム技研以外の変換器メーカーでは、「変換器の精度」を指す場合次のような諸々の語が使用されていますが、それらの内容は必ずしも明確ではありません。
 ●精  度  ●精度定格
 ●変換精度  ●許 容 差       ■


注1)測定・変換の精度には、外部要因である以下のような環境
条件が影響するおそれがありますから、これらを考慮して統一的に表現しないと、異なるメーカー製品の客観的な比較は不可能なわけです。
 ●自己加熱  ●外部磁界
 ●周囲温度  ●入力側の各種条件
 ●電源電圧  ●出力側の外部負荷抵抗
 ●電源周波数
注2)「基準動作条件」については、JIS C 1803(工業プロセス計 測制御機器の性能表示法通則)に、「基準動作条件 は、自然環境又は人工的環境の基準を示す値、及びそれらが変動しても機器の基準性能に影響を与えないと考えられる外部影響量の許容範囲をいう」と規定されていますが、『基準精度』の場合は、それらの各外部要因ごとに、エム・システム技研が予め具体的な数値を定めたもの(たとえば、周囲温度:25℃±2℃)をいいます。

【(株)エム・システム技研 開発部】

 
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