世界のフィールドバス事情 第1回
フィールドバスとは何か?



(株)エム・システム技研 開発部 主管技師

 現在のプロセス制御システムでは、現場にある差圧伝送器やバルブ等と制御室にある制御装置であるDCS(分散制御システム)やパネルマウント形の指示調節計との間の信号伝送はDC4~20mAの電流信号で行うのが一般的です。この伝送方式に代わる新しい優れた方式としてフィールドバス方式が考えられています。新しい方式はデジタル通信による方式です。このため、新方式が普及するにはいくつかの課題があります。最も大きい課題として、新方式での通信規約の標準化という大切な作業があります。
 フィールドバスの標準化は、国際的には米国のISA(Instrument Society of America)のフィールドバス委員会であるSP 50で最も熱心に審議されています。決定された規格の内容が直接メーカーの製品開発に影響を与えることから、世界中の主要な計測制御機器メーカーはこの委員会に参加しています。エム・システム技研は、1990年4月からこの委員会に参加しています。この欄では、こうした活動を通して得られる世界中のフィールドバスに関連した話題を適宜お伝えしていきたいと思います。
 ただし、このレポートの内容には自由にエム・システム技研独自の見方や解釈も加える予定であり、必ずしもすべてがISA等の団体の立場を代弁する内容ではない点にご留意願います。

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 現在のアナログ伝送方式、すなわちDC4~20mAの電流信号を用いた現場機器と制御装置の間の信号伝送方式では、伝送できるデータは、PV(測定値)やMV(バルブへの操作出力値)のデータ1点だけで、通信方向も一方向だけに限られています。将来、この伝送方式にとって代わると予想される新しい通信方式として、現場機器や制御装置をマルチドロップ形のシリアル通信で結ぶ方式が考えられています。このような方式は、現場機器や制御装置をバス状に結んだ形になることから、一般にフィールドバスという名前で呼ばれています。
 フィールドバスでは、シリアル通信を使用するため、現場機器と制御装置間のデータ伝送点数を多点にできますし、通信方向も双方向にできます。このような通信機能が現場計器に組み込まれ、多数のデータが現場機器と制御機器との間で通信できるようになると、種々の新しい現場機器が現れてくることが予想されます。
 たとえば、PID制御機能を組み込んだフィールドバス対応形のバルブアクチュエータが考えられます。このアクチュエータでは、PID制御を行うループの設定値や測定値はフィールドバスにつながる他の機器から通信によってアクチュエータに伝送され、PID制御が実行され、バルブが駆動されます。アクチュエータの制御出力値は中央の制御装置で監視できるように通信で制御装置に送られます(図1参照)。
 プラントの計装に際して、フィールドバスには柔軟性があり、PIDのような制御機能を現状の制御システムと同様に制御装置の中に置くこともできますし、現場計器の中に置くこともできます。現場に制御機能を置くローカル制御方式が普及すれば、中央の制御装置の主要機能としては、通信によって現場の制御ループに設定値の指令を与えたり、各ループのトレンドデータを通信によって収集するプラントの操業監視機能が中心になり、制御機能の必要性はあまり高くなくなります。したがって、現在のプロセス制御システムの構成が大きく変化することが予想されます。
 以上、フィールドバスの概要を述べましたが、引続き次回は、その標準化の状況についてご紹介します。






































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