設計者からのメッセージ


(株)エム・システム技研 開発部 主任

 3年前に発売した電圧/ポテンショメータ変換器(形式:CVR)は、類似製品がなく、お客様に喜んでいただいています。しかし、CVRの機構部に専門メーカの部品を採用したため、標準納期が3ヵ月になってしまい、短納期が特長のエム・システム製品らしくないとのお叱りも受けていました。
 そこで、この納期の問題を根本解決するため、機構部を含めて新規設計することにし、この程新製品「CVR1」を開発しました。技術的には、バルブ駆動部「ミニトップ」の開発で得た機構部のノウハウを大幅に利用できたため、目標通りの性能を実現しました。
 設計上のポイントは、「ポテンショメータ」というスライド部分を持つ部品を使いながら、十分な耐久性をいかにして保持するかということです。これを次の工夫で解決しました。

■自動不感帯可変回路(特許出願中)

  PID調節計の制御出力には、サイクリング現象や微動現象が現れます。これが現れる頻度は、入力信号の振れとPIDパラメータの設定値に大きく依存しますが、特にオートチューニング形調節計では、制御出力信号の振れがしばしば見られます。
 操作端が空気式の場合とか、ソリッドステートのモータ回転数制御回路を使えば、サイクリングがあっても耐久性はほとんど問題になりません。しかし、ポテンショメータを駆動する場合には、その耐久性に大きい影響を与えます。
 新規開発した自動不感帯幅調整回路では、CVR1の入力信号にサイクリングがあると、自動的に不感帯幅が広がるようになっています。また、サイクリングが少なくなるにつれてゆっくりと不感帯幅を狭めます。この方式を採用することにより、最小不感帯幅を0.2%まで縮小しても耐久性を十分に維持することができました。

■モータ起動制限タイマ

CVR1の入力信号には、サイクリング以外にノイズなどによるリップルが含まれる恐れがあります。このリップルに追従してモータが正転/逆転を繰り返すと、出力値がほとんど変動しないのに機構部品だけが消耗してしまいます。
 一般にリップルをとるには、フィルタ回路が使われますが、低周波成分までフィルタ回路で除去しようとすると、応答速度が大幅に遅くなります。
 CVR1では、高い周波数成分をフィルタ回路で除去し、低い周波数成分の除去にはモータ起動制限タイマ回路を用いました。モータがいったん動作を停止した後、再起動するまでの時間を制限することにより、頻繁な起動/停止が避けられます。モータは、いったん起動すると平衡点まで連続して回り続けますから、応答速度はほとんど犠牲になりません。この回路により、耐久性が20倍以上向上しました。

■モータ負荷のディレーティング

 モータの寿命は「定格負荷、定格回転数における使用時間」で定義されています。つまり、モータの寿命を伸ばすには、負荷を小さくするか回転数を低くすればよいことになります。
 そのため、CVR1ではケースに収納できる範囲内でできるだけ大きいモータを選択し、モータに印加する電圧を定格値より大幅に下げました。また、この状態でポテンショメータを駆動できるように、駆動系の摩擦抵抗を少なくする改良を加えました。
ケース内でモータ・ギアーが回っている変換器を作るというので、ワクワクしながら設計しました。いざ試作品ができると様々な問題点が見えてきて、完成するまでにかなり長い時間がかかってしまいました。できあがって動作させてみて、やはり風変わりな変換器だという感じを深くしています。

     




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