世界のフィールドバス事情 第2回 ISAでのフィールドバスの標準化 (株)エム・システム技研 開発部 主管技師 プロセス制御システムにおいて、現場機器である差圧伝送器やバルブなどと計器室にある制御装置との間の信号伝送をマルチドロップ形のシリアル通信で行う方式を一般的にフィールドバス方式と呼んでいます。 * * * フィールドバスの方式に関しては、計装制御機器メーカーが各社独自の方式を開発したのでは、フィールドバス対応の機器の種類が限られ、他社製品との互換性がなく、ユーザーにとって有用なフィールドバスとはなりえません。こうしたことから方式の標準規格化の必要性が理解できます。フィールドバスの規格の作成や審議は米国のISA(Instrument Society of America)のSP 50(Standard and Practice 50)委員会で最も熱心に進められています。委員会には、フィールドバスに関心のある米国、欧州(独、仏、英)、日本の主要な計装機器メーカー、ユーザーおよびコンサルタントが参加しており、エム・システム技研もメンバーになっています。委員会は年間3、4回程度開かれています。ちなみにこの委員会は、さきに1970年代、電流信号による信号伝送について4~20mAの統一規格を制定しています。 SP 50のフィールドバス標準化へのアプローチとしては、まずフィールドバスに対する要求機能を検討し、これに合う規格を開発していく方針の下にスタートしています。ただし、委員会での規格審議の過程で当初考えた要求機能は常に見直されています。 以下に、SP 50で当初検討されたフィールドバスに対する要求機能の概要を説明します。 (参考文献 ISA SP 50著、“Draft Functional Guidelines”、April 1987) SP 50では、要求機能を必須機能と望ましい機能に分けて記述しています。必須機能は妥協の余地がない最小限必要な機能として位置づけられています。また、要求機能は通信技術の専門用語よりも、むしろ計装エンジニアの言葉で記述されています。 SP 50は、はじめにフィールドバスの適用分野としてH1とH2とを定義しています。H1は、4~20mA計器が使われている分野を対象として、その環境をフィールドバスで置き換えることを意図しています。H2はH1の分野をさらに拡大し、高速のシーケンス処理などを行う分野を対象としています。また、開発する規格としては、一つの規格がH1もH2も満足することを理想としています。 H1、H2ともに必須の機能について 開発する規格に適合する製品は、当然現状の計装システムと調和して設置できる、(レトロフィットできる)必要があります。同様に、そうした製品は現状の機械制御の環境にも共存できなくてはなりません。また、ある程度将来を考えたとき、必要と予測される通信機能を満足する必要もあります。このため、次の事項に対する考慮が必要です。 ●製品の設置条件 ●信頼性 ●電源供給方法 ●対環境性能の規定 読者の皆様のフィールドバスに対する要求事項はいかがでしょうか? 必須機能の詳細については次号で説明いたします。 |