台数は必要最小限ということになり、一般に台数に限りがあります。したがって、緊急操作時にはMMIを操作するオペレータの優劣が安全操業のキーポイントになる傾向があります。ボードオペレーションの場合のように運転部門の直長やスタッフ、工務部門のエンジニアが並列に監視することができず、それらの人たちの臨機のノウハウが生かされなくなってきました。 II.緊急時の対応において、CRTオペレータステーションの操作には複雑なものが多く、画面密度が濃くなっていく傾向があります。したがって、画面のタッチターゲットも小さくなり、確実で容易な操作ができなくなる危惧があるため、設計上留意する必要があります。 III.DCSの故障がおよぼす影響は広範囲にわたることが多く、ことにハイウェイ伝送系が故障した場合、CRTオペレータステーションに重大な支障を来たすことになります。すなわち、コントローラ系は正常動作していますが、その情報がCRTオペレータステーションに伝送されないため、監視ができず、さらに操作もできないため、シャットダウン操作そのものにも支障を来たす恐れがあります。原油切換えや運転切換え時のように、系が不安定の状態で万一このようなトラブルが発生した場合には、重大な事態を引き起こしてしまいます。 IV.DCSの多機能化、高級制御の実現に伴い、制御系の不調などでマニュアルオペレーションを行う場合に、系全体がシビアな制御パターンをとっているためその操作は非常に難しく、装置の系をユニットとしてとらえたマニュアルオペレーションの捉え方が必要です。また、安全対策についても十分考慮する必要があります。 上述の(I)~(IV)の問題点を解決するため、大型スクリーンや監視専用モニタCRTの設置、CRTオペレータステーション上のキー配列の工夫、アラームの階層分けによる早期危険予知、 さらにバックアップ用のハードウェアの設置、AI(Artificial Intelligence;人工知能)を利用した運転支援エキスパートシステムによるサポートなどが考えられ、すでに実現されているもの、その途中段階にあるものなど改善の努力が払われています。 ここでとりあげた“制御出力バックアップ操作器(形式:11JB、以下11JBと省略)”もその改善案の1つを具体化したものです。 1.11JBの開発に至る経緯 11JBをエム・システム技研と三菱石油エンジニアリングが共同で開発することになった経緯は以下の通りです。 東北石油 <注>仙台製油所の制御システムではオンサイト、オフサイトともCRTオペレーション型DCSが導入され、すでに11年を経ています。当製油所へのDCS導入手順をみると、まずシングルループコントローラによる部分的なDCS化を実現し、次のステップとしてマルチループDCSを使用してユニット単位のDCS化を行い、段階的にDCS化の範囲を広げて省エネルギーを主体にアドバンスト制御も実施してきました。その後、十分DCSの実績を踏まえたうえで老朽化したアナログ計器の取替えを目的として、全面的にCRTオペレーション型DCSを導入し、現在に至っています。 導入の経緯からも分かるとおり、安全性を十分確認しながらグレードアップを図ってきた仙台製油所のDCSにあっては、CRTオペレーションの良さを生かし、同時に安全性も具備させる意味で通信系やコントローラが故障したときスムーズなバックアップによって容易に安心してメンテナンスできる方策についての関心も強くなっていま <注1>東北石油(株)は三菱石油(株)の系列会社。 |
![]() ![]() |