験不足により確立されていなかったために、意図しない切換えが発生し、二重化する方が信頼度が低いとユーザーが感じるような事態も発生しました。 これを根本解決するために、最近発表されたDCSでは、平行運転形の完全二重化形コントローラを採用しています。 数年前から事務用コンピュータの業界でも、これに類似の完全デュアル化されたノンストップ コンピュータと呼ばれる製品が、24時間稼動の必要なところで使用されています。 4.次世代DCSはフィールドバスか? 次世代のDCSとして、フィールドバスが産声をあげようとしています。フィールドバスのコンセプトは、ISA(アメリカ計測学会)のSP50委員会で決められました。 この委員会で、コンセプトを決める際に積極的な役割を果たしたのは、エクソン・ケミカル社のラッシャー氏やデュポン社のラングフォード氏など、巨大化学産業の計装を担当しているユーザーの代表者です。 フィールドバスの重要なコンセプトは、既設プラントの現場に制御機器を追加するときに、配線の追加工事をしないで済ませることと、現場の伝送器または電空ポジショナにPID調節器を組み込むことの2点です。 このコンセプトを日本の実情に当てはめると、大きな問題に遭遇します。 第1の問題は、配線の種類です。ISAフィールドバス委員会で決定したH1規格のフィールドバスの伝送速度は31.25kbpsですが、この速度は、アメリカで計装用に使用されている「シールド付より対線(ツイストペア線)」を使用した場合に1.9km伝送可能という前提で決められています。 日本では、ほとんどの工場で計装用ケーブルとして、CVV(モータ関係の操作回路用に規格化された制御用ビニルケーブル)を使用しています。このCVVは、電気的特性からみれば、平行ケーブルと同じであるため、H1規格の伝送距離は200m以下という実験結果が出されています。このために、既設の機器をフィールドバス形に交換したとき、既設の配線を生かせないという問題が生じます。逆に言えば、配線の引き直しが必要になるために、フィールドバス機器にリプレースできない可能性が生じます。 第2のPIDコントローラをフィールド機器に収納する点でも、石油化学プラントであれば、フィールド機器は、2線式伝送器と電空ポジショナがほとんどですから、何も問題はありませんが、他の業界に適用するとなると問題が生じます。 同じ化学工場でも、川下側にある加工度の高い工場ではバッチ制御が多くなり、多様なセンサやアクチュエータが使用されています。これらは、現在、DC4~20mA信号で統一化されています。これがフィールドバス化されるまでには、かなり期間がかかるでしょう。 また、温度センサ信号の取扱いは、日本とアメリカでは大きく異なります。日本の工場では、熱電対や測温抵抗体の信号は、変換しないでそのまま計器室まで配線しています。一方、アメリカでは、2線式伝送器で統一信号に変換して計器室まで配線しています。このような習慣の違いをフィールドバスだけで吸収して次世代のDCSと位置づけるのにはいささか無理があります。 5.次世代DCSはスーパーDCS エム・システム技研のユーザーは、素材産業(鉄鋼、非鉄、石油、化学、繊維、紙パ、セメント、食品、薬品)、公共事業(上下水、電力)、加工組立産業、ビル管理等あらゆる分野にわたっています。 当社では、機会をとらえては、広い範囲のユーザーと話し合い、どのような計装用コンポーネントが必要か、ということに絶えず注意を払ってきました。 次世代のDCSがフィールドバスになるという計装業界の動きに対して、当社では、フィールドバスは、スーパーDCSのバリエーションの1つと考えました。 エム・システム技研からは、このスーパーDCSを包含した新しい多目的計装コンポーネントMsysNetシリーズを提案します。 MsysNetシリーズの機能は下記のようになります。 ●スーパーDCS(ワンループDCS) ●多重伝送 ●リモートI/O ●通信回線I/O |