●監視・操作用パソコンソフト あらゆる目的の計装信号は、計装用LAN MsysNetにのせればパソコンで処理できるようになります。 MsysNetシリーズは、変換器の出力信号をネットワークに接続できるようにシリアル信号化したものです。 多重伝送システム、リモートI/Oシステムおよび通信回線I/Oシステムは、すでに商品化して7年前から発売しています。これに加えて、スーパーDCSと監視・操作用パソコンソフトを新規開発し、ネットワーク・プロトコルを機能アップさせて、システムとして完成させることにしました。 次回からは、ワンループDCSの概要について紹介します。 筆者からのコメント 私が、エム・システム技研に入社してから9年が過ぎました。それ以前の約20年間は、工業計器メーカーで計装技術者として、化学、合繊、紙パルプ、薬品、食品プラントのアプリケーション設計、パネルと計装工事設計、スタートアップおよび計装システムの開発などに従事してきました。 石油化学コンビナートが次々に建設されていた高度成長期は、工業計器業界においても成長期でした。私が担当していた当時の食品、薬品工場は、ほとんど手動で運転されていました。これらの工場を自動化するときには、計装方式が確立されていなかったために、ユーザーのプロセス技術者と共同で制御システムを構築してきました。非常に難しい工程を自動化するときは、試運転前になると心配で夜中に目をさましたことを覚えています。このような経験により、各種の工場を自動化するのに必要なハードの知識および計装ノウハウが身につきました。 この間、16年間にわたって砂糖結晶缶の自動化システムを手がけ、ワンチップマイコンの出現でようやく完成にこぎつけました。ここでは、センサと制御方式に関する特許12件(共同出願を含む)を取得しました。いまでは、日本国内の80%以上の製糖工場で、このシステムが採用されています。 また、計装分野以外では、自社の事務部門のコンピュータ化を経験しました。工業計器メーカーの営業部門の見積/手配/見積書作成/承認図作成システムをオンライン化するプロジェクトです。この基本計画を担当し、1974年に稼動を開始しました。このシステムは、汎用コンピュータ(IBM S/370)がオンライン機能を持った初期のものです。工業計器業界で類似システムが稼動し始めたのは、それから8年後でした。 同時に、A5判サイズのスペックシート集の発行を計画し、その設計(表現内容、機種構成など)と記事作成を行いました。これがきっかけになって、工業計器業界では仕様書集の発行が当たり前のことになりました。 1984年、工業計器メーカー時代の上司が経営しているエム・システム技研に入社。開発部長として変換器および多重伝送システム用機器約800機種の要求仕様書を作成し、開発工程を指揮する経験を持ちました。 この間、IBM社製コンピュータによる社内事務処理(受注、手配、製造、在庫管理、回収)のオンライン化を計画し、3年前には社内の手書き伝票ゼロを実現しました。このシステムにより、現在、月産2万台(約1,000機種)の変換器類が標準納期4日間で納入可能になっています。 1992年、工業計器メーカーにおける計装技術、エム・システム技研における製品開発の知識および事務処理のコンピュータ化の経験を集大成して、MsysNetシリーズの開発を開始しました。 7年前から販売している多重伝送システム(DATA・M=データム)、4年前から販売しているマイコン形変換器と演算器および昨年販売をはじめたシーケンサ用PIDコントローラなどは、パソコンDCSの実現を最終目標にしています。今回、ワンループDCSの開発と計装用LAN(MsysNet)の機能アップでこれが完成します。 MsysNetシリーズは、開発技術者ではなく計装技術者が基本設計を担当した製品であることに注目してほしいと思います。私が工業計器メーカーで計装技術者として自社製品を使ってアプリケーションを行っていたとき、「何と使いにくい製品だろう、自分ならこう作るものを」と感じさせられたことが多々ありました。今は、この恨み(?)を思う存分、晴らせることに満足感を味わっています。 ワンループDCSを包含した多目的計装コンポーネントを開発するには、気力だけでは間に合いません。一定水準以上の技術力が必要です。これを実現する当社の開発部は総勢30名です。このうち、私が勤務していた工業計器メーカーの出身者は7名で、それぞれが専門分野の経験を充分に積んだエキスパートです。また、各種の機器メーカー出身の開発技術者が7名いて、工業計器メーカーでは得られない技術力を身につけています。得意分野は全員が異なります。これらメンバーの技術と経験および開発部員全員のチームワークによって初めてワンループDCSや計装LAN(MsysNet)が完成できるのだと考えています。 【(株)エム・システム技研 取締役開発部長】 |
|