多数決フィルタは、デジタル式フィルタ(形式:JFT他)がもっている機能の1つです。デジタル式フィルタは、各変換器シリーズごとに用意されています。したがって、まず構造面の要件から変換器シリーズを選択した後、デジタル式フィルタを選ぶことが可能です。
 デジタル式フィルタには、次にあげる各種の機能が用意されており、プログラミング・ユニット(形式:PU-2)を使って、これらの機能を自由に選択できます。
I.進み演算
II.無駄時間演算
III.移動平均
IV.一次遅れ
V.等速応答
VI.多数決フィルタ
上記の6種類の機能のうち、“進み演算”と“無駄時間演算”以外は、アナログ信号の変化を平滑化するためのフィルタです。

 (1)進み演算

微分演算(位相進み演算)をデジタル回路で実現しています。すなわち、入力信号の変化速度を検出し、たとえ変化量は小さくても変化速度が大きい場合に大きい出力を得、これに基づいて将来の大きい変化量を予測しての対応動作(微分動作)を可能にしています。
 たとえば、ボイラーの燃焼制御で、燃料流量の変動を早期に把握して空気流量を先に制御することにより、不完全燃焼を防止する目的などに使われています。

 (2)無駄時間演算

 入力信号に一定時間だけ遅れをもたせて出力します。
 たとえば、コンベア・スケールで計量された固形原料が、一定時間後に撹拌槽に投入され、それに同期して水の供給量を制御する場合などに、この演算器が必要になります。すなわち、測定信号に一定時間の遅れをもたせたいときに用いられます。

 (3)移動平均

 一定時間ごとにサンプルしたデータを、一定のサンプル数で平均して出力します。新しいデータを1個追加するたびに、最も古いデータを1個捨てます。

 (4)一次遅れ

 アナログ回路方式では、コンデンサと抵抗で実現する一次遅れ回路を、デジタル演算方式で実現しています。信号のフィルタとしては最も用途が広く、便利なものです。フィルタが必要なときは、まず最初に「一次遅れフィルタ」で効果を試してみるのが普通です。

 (5)等速応答

入力信号の変化速度が設定速度より早くなった場合に変化速度を抑え、設定された一定の変化速度で出力を変化させる機能です。正方向の変化速度と負方向の変化速度を個別に設定できます。
 たとえば、大口径のスチーム用調節弁のように、急激に弁を開くとボイラーに悪影響を与える場合などに使用されます。

 (6)多数決フィルタ

 今回テーマとしてとり上げた機能です。スパイク状のノイズに対して「移動平均」、「一次遅れ」または「等速応答」などのフィルタで対応すると、スパイク状のノイズの痕跡が残ります。この痕跡を消そうとすると、応答速度が極めて遅くなります。多数決フィルタは、応答速度をほとんど犠牲にしないでスパイクノイズを除去できます。

     

設計者からのコメント

(株)エム・システム技研 
開発部 主任技師

 “プロセス信号のノイズ処理を行うとき、どのようなフィルタが最も効果があるか”は実際に試してみないとわからないことが多いと思います。このようなとき、デジタル式フィルタを使用すれば、プログラミング・ユニットでパラメータを変更することにより、各種の機能を実際に動作させたうえで最適の方式を選択できます。
 多数決フィルタは、デジタル式フィルタを開発する際の目玉として開発部内で検討しました。スペックソフト形変換器JXシリーズでは、変換器自身の信号処理用にこの機能を使用しています。この便利な機能の利用を、ユーザーの皆様もぜひお試しください。
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