世界のフィールドバス事情 第9回
ISAでのフィールドバスの標準化
(その7)



(株)エム・システム技研 開発部 主管技師

 ISA/SP 50発行の“Draft Functional Guidelines”(1987年4月発行)に沿ってのフィールドバスに対する要求機能の説明を続けます。この機能ガイドラインにはISAのフィールドバスに対する種々のアイデアが織り込まれています。今回も前回に続いてプロセス制御分野でDC4~20mA計器が使われている分野(H1)の環境をフィールドバスで置き換える際に実現するのが極めて望ましいと考えられている機能について説明します。

 1.部分冗長化

 プラントによっては、フィールドバスの通信経路上の特定の区間でノイズの影響を受けやすい場合があります。この場合、そのような区間を部分的に冗長化することができればフィールドバスによる通信の信頼性が高められます。

 2.ブロードキャスト

 プラントが緊急状態に陥った場合には、プラントを操作している制御システムで制御出力を担当している機器の出力状態をプラントにとって安全側に速やかに設定する必要があります。たとえば、シャットダウンにかかわるバルブは速やかに操作する必要があります。このような場合、もし計器室からフィールドバスにつながる機器に緊急状態になったことをいち早く一斉に通知できれば、各機器は速やかに緊急状態でとるべき必要な処理を行えます。このように計器室のプラント制御監視機器からフィールドバスにつながる機器に一斉にメッセージを伝える機能をブロードキャストと呼んでいます。ブロードキャストの文字通りの訳語は“放送”です(右図参照)。
 ブロードキャストの機能は、緊急状態の通報のほかにフィールドバスにつながる機器同士が内部に持っている時刻の同期をとるためにも必要となります。時刻の同期は、現状の計装システムで分散制御システムが実行している制御機能を現場機器に埋め込もうとすると必要になる機能です。この時刻の同期の精度に関しては次のことが言えます。現場機器だけでの制御を可能とするには、制御したいプラントの応答が早い場合には、制御ループの実行周期は0.1秒程度になります。このような場合に対応するには、当然機器間の時刻の同期はそれより良い精度で行うことが必要です。このあたりの理論は現在検討されています。

 3.副次的プロセス計測値(デジタル値)

 将来、レベル検出用の伝送器にレベルの上下限検出用リミット・スイッチから信号を取り込み、レベルのアナログ計測値に付随して上下限の状態信号を併せて伝送できる複合機器の出現が予想されます。フィールドバスの規格では、このような機器にも対応し副次的プロセス計測値を取扱える必要があります。

 
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 望ましい要求項目は約30項目ありますが、以上で主要な項目についての説明は終えます。次にあげる項目については説明を省きました。
 電線以外のフィールドバスのメディア、リモートI/O、現場機器主導のレポート機能、ユーザープログラムのダウンロード、自動ノードアドレス設定など。
 次回は、今まで説明したフィールドバスに対する要求機能に基づく規格化の状況について説明します。

     

























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