世界のフィールドバス事情 第11回
ISAでのフィールドバスの標準化
(その9)



(株)エム・システム技研 開発部 主管技師

 ISAではフィールドバスの規格をOSIの基本参照モデル(ISO 7498-1984、JIS X 5003-1987)に基づいて開発しています。このモデルは通信の規格を開発するための概念的モデルであり、7階層からなっています。このうち物理層、データリンク層、ネットワーク層、トランスポート層については前回説明しました。今回は残りの層の概要を説明します。

 (1)セション層(第5層)

通信の形態によっては送信と受信を同時に行う場合があります。セション層ではこのような場合の動作設定ができます。また、長いメッセージを通信中に通信エラーが発生した場合には、エラーが発生する前の時点に戻って通信をやり直すために同期点と呼ぶ目印を定義し、これを識別することが可能です。この機能により、エラー発生時にメッセージを再送できます。

 (2)プレゼンテーション層(第6層)

 この層では通信データを1つ上の層である応用層が理解できるデータに変換するためにあります。たとえば、異なるメーカーのコンピュータ間では使用している文字のコードが異なっていることがあります。このような場合、送信側では受け取るコンピュータの文字コードに合うようにデータを変換してから送る必要があります。

 (3)応用層(第7層)

 層の名前からは、この層には応用プログラムが詰まっている感じを受けます。実際には、応用プログラムはこの層の上に位置し、この層には存在しません。この層には応用プログラムの動作を実行する“応用サービス”が割り付けられます。このようなサービスの例として、協調動作が必要な複数の応用プロセス間の同期機能とか通信相手の名前やアドレスなどを識別する機能などがあります。

 
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 OSIの基本参照モデルの各階層の概要は以上の通りです。次にこのモデルで使われている専門用語についていくつか説明します。これらの用語はISAのフィールドバスの規格にも出てきますが、最初は非常に抽象的な印象を受けました。

 エンティティ

各層ごとに存在してそれぞれの層の機能を実行する実体のこと。物理層では実体がハードウェアであり、他の層ではソフトウェアであることが多い。

 サービスとプロトコル

 サービスという言葉は通常、人が他人や外部のシステムに何かを要求すると、要求にこたえてくれることを意味しますが、OSI各層のサービスとは下位層のエンティティが1つ上の層のエンティティに提供する機能のことを意味します。たとえば、データリンク層では下位の物理層がもつビット列を電気信号に変調するサービスを利用して、隣のノード(局)にデータを送ることができます。
 プロトコルは同一階層間での通信の手順であり、プロトコルの実行により各層のサービスが提供されます。
 (次号につづく)

     



























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