ISAでのフィールドバスの標準化はISO(International Standard Organization国際標準化機構)のOSI(Open Systems Interconnection開放型システム間相互接続)基本参照モデルに基づいて進められています。このモデルは7階層からなります。ISAのフィールドバス規格は、このうちの物理層、データリンク層、応用層とISAのフィールドバスの特徴でもあるOSIモデルの上に位置するユーザー層からなります(図参照)。
規格の開発は、ここ数年ISA/SP50とIEC/TC65/SC65C/WG6が合同委員会を開いて進めています。この委員会には、フィールドバスに関心のある米国、欧州、(独、仏、英)および日本の主要な計装機器メーカー、ユーザー、またコンサルタントが参加して活発に活動しています。
物理層
この層は通信路の物理媒体や通信路の構成方法、通信機器の通信路への接続方法、通信速度などを規定します。物理層の規格について、通信路の媒体が電線の場合の審議を終え1992年9月にはISA-S50.02-1992 Fieldbus Standard For Use in Industrial Control Systems、Part2:Physical LayerSpecification and Service Definitionとして完成しました。その後は、この規格に追加する形で無線、光ファイバ媒体に対する規格を審議中です。
フィールドバスの媒体として電線を使用する場合、この通信路と送信器・受信器を接続するMAU(Medium Attachment Unit)に関する規定としてプロセス制御用にもFA用にも対応できるよう伝送速度の異なる次の規格が定められています。
(1)31.25kbit/s電圧モード、電線媒体
(2)1.0Mbit/s電圧モード、電線媒体
(3)1.0Mbit/s電流モード、電線媒体
(4)2.5Mbit/s電圧モード、電線媒体
ここで、(1)はプロセス制御向けの規格であり、今後、最初に普及すると思われるのでその概要を説明しましょう。
まずこの規格の開発に際して、ISA/SP50ではプロセス制御の環境下での物理層に対する要求機能を検討しました。
現在の計装制御システムでは、現場機器と計器室内の制御装置との間の信号伝送ではDC4~20mAを使用したアナログ電流伝送方式により1点の信号を片方向(たとえば現場センサから計器室)に伝送しています。フィールドバスに対する最も基本的な要求機能はマルチドロップのシリアル通信であり、それぞれが物理的に離れた位置に設置される多数の現場機器と制御装置との間で、多数の信号の双方向伝送を可能にすることです。
ここで、フィールドバスの関連技術である標準的なシルアル通信方式について考えてみます。たとえばEIA(Electronic Industries Association米国電子工業会)のRS-232-C、RS-485は物理層相当の規格として広く普及しています。とくにRS-485はマルチドロップのシリアル通信が可能です。そこで、フィ-ルドバスの物理層の規格を新たに開発しなくてもRS-485を採用すればよいように考えられます。実際、シーケンサ間の通信ではこの規格に準拠した方式が多く採用されています。しかし、この規格ではプロセス制御向けの要求機能の重要な部分を満たすことができないという問題があるためISA/SP50では独自の規格を開発しました。詳細は次号で説明します。