世界のフィールドバス事情 第27回
フィールドバスのパソコンインタフェース



(株)エム・システム技研 開発部 主管技師

 
 フィールドバス システムの立ち上げ時には、バス上の通信が正しく機能することを確かめる必要があります。こうした場合、パソコンをベースとした手軽なフィールドバスの支援システムがあれば役立ちます。そうしたシステムが実際にIFC(International Field-bus Consortium)の活動で試作されています。IFCは、全世界の計装メーカーやユーザーが集まり、ISAやIECでのフィールドバスの国際規格の開発を支援するため1990年10月に発足したボランティアの団体です。IFCでは開発段階の規格に基づき、実プラントでフィールドバスのテストを行うことによって規格を評価し、その評価結果をISA/IECへ報告しています。
 今回は、IFCが1992年4月に米国フィラデルフィアで開催したISA'92の展示会用の打合せ会議の資料(IFC 920422 76)に沿ってフィールドバス用の支援システムについて考えてみましょう。この資料は一般に公開されている資料です。それには設計内容が具体的な回路図や、ソフトウェアの概要として記述されています。
 ここでは、IBM-PC/AT互換機パソコンをベースに、CRTコントローラなど各種の制御カードを実装できる拡張バススロットにフィールドバスの通信制御を担当するカード(フィールドバス通信カード;以下、PCカードと略す)を実装する方式でフィールドバス支援システムを構成しています。
 このパソコン ベースのシステムは、PC上で作成された各種のソフトウェアによりフィールド機器の代用や制御ループの監視操作を行うオペレータ ステーション、また、フィールドバス上のデータの流れを解析するバス アナライザとして多機能な役割を果たします。
 ところで、この試作品が開発された段階ではフィールドバスの規格はその一部である物理層の規格のみ確定していたため、試作品が参照した規格は物理層以外は必ずしも正式な規格に従っていません。しかし、フィールドバスの支援システムとしてパソコンをベースとしたシステムを構成するアプローチは、当然正式な規格に対応する場合でも十分通用します。
 PCカードには、CPU(68HC11)、メモリ、モデムなどの素子が実装されています。ここで使用しているモデムは、フィールドバスの物理層の規格に従うようにデータを符号化したり復号化するために使われます。ここではノルウェーの研究団体が試作した製品を使用しています。
 このPCカードの特長として共有メモリ(デュアル ポートRAM)の活用があげられます。フィールドバス上を流れるデータは、フィールドバスの通信を担当するカード内のCPUによって共有メモリに蓄えられます。パソコンのCPUはPCカード内のCPUと全く非同期に共有メモリをアクセスでき、フィールドバスの動作を意識することなく様々な機能を実現できます。
 フィールドバスのパソコン インタフェースを実現するのに共有メモリを活用するこの方式はフィールドバスに限らず、シリアル通信をベースにしたネットワーク上を流れるデータをプロトコールの異なる別のネットワークや上位の監視システムに伝える有効な方法と考えられます。

     








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