世界のフィールドバス事情 第18回
デバイス記述言語(DDL)



(株)エム・システム技研 開発部 主管技師


 現場機器と計器室(制御監視装置)間の信号伝送については、DC4~20mAのアナログ信号を使用する計装システムからデジタル通信のフィールドバスを使用する計装システムへ移行する中間の段階として、スマート伝送を活用する計装システムがあります。スマート伝送では、アナログ信号にデジタル信号を重畳した信号によってスマート形の現場機器と上位システム間の通信ができます。スマート伝送のプロトコルの代表例として米国のローズマウント社が提唱しているHART(Highway Addressable Remote Transducer)プロトコルがあります。このプロトコルの仕様は公開されており、HARTユーザー・グループも組織化されて米国やドイツの計装業界では有力な規格になっています。
 すでにHARTプロトコルに基づく多数のメーカーのフィールド機器や上位システム、ハンドヘルドコンソールなどが出現しています。こうした状況下で、新しいフィールド機器が出現するたびにその機器との接続を可能とするため、上位システム側のソフトを手直しする必要が生じます。ローズマウント社では、この作業の負荷を低減する有力な試みとしてデバイス記述言語(Device Description Language、以下DDLと略称)と名付けた言語を活用する方法を提案しています。

DDLの原理

 DDLは、上位システムが通信ラインを経由して制御できるフィールド機器の振舞いを記述するための言語です。DDLで記述されたファイルはプログラミング言語と同様に、コンパイルして圧縮した形で上位システムのメモリ上に置きます。上位システムにはDDLを解釈するソフトを備えておき、DDLで記述されたフィールド機器の記述内容を見て現場機器と通信できます。
 上位システムと新規に開発された現場機器を接続するには、その機器のDDLで記述した仕様情報をすでに上位システムが持っている現場機器の仕様情報に追加することによって上位システムのソフトの手直しが完了します。DDLを使用しない場合には、新規の機器用のドライバソフトを開発する必要があり、DDLを使用する場合より大幅にソフトの手直しに手間がかかります。
 DDLで記述する機器の内容は通信プロトコルのユーザー層の内容です。したがって、DDLはユーザー層の構成に依存して設計されます。HARTプロトコルの場合、DDLで記述する具体的な内容としては、現場機器が受け付ける標準的なコマンドのほかに、メーカー特有のコマンドの使い方や各コマンドで読み書きできる変数、また変数の取りうる範囲の規定などがあります。たとえば、差圧伝送器の場合、計測した差圧の読み方、タグ名やタグコメントの計器への書き方、フランジの材質の読み方などのコマンドの使用方法があります。
 HARTプロトコル用のDDLは以上の背景に合わせて英数字を使用した言語としてプログラミング言語風に設計されています。日本語のサポートもHARTユーザー会議で議論されています。
 DDLの概念はフィールドバスシステムでも使えるため、ISPフィールドバスでもフィールドバスの仕様にあうDDLが開発されています。

     









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