世界のフィールドバス事情 第19回
ISAでのフィールドバスの標準化
(その16)



(株)エム・システム技研 開発部 主管技師


ユーザー層の標準化

 ISA/SP 50委員会ではフィールドバスの規格を4つの階層と、それらを管理する部分に分けて標準化を進めています(図参照)。ここで、物理層、データリンク層、応用層はISO規格である開放型システム間相互接続の基本参照モデル(ISO 7498)に従って通信の規格として開発されています。
 ユーザー層はこの基本参照モデルの外側に位置づけられています。今回はユーザー層の標準化の状況について説明しましょう。
 SP 50委員会の中には、ユーザー層委員会が設置されており、エクソンのR.ラッシャ氏が委員長を務めています。そこでは、プロセス制御分野でのユーザー層の規格化が検討され、検討結果は800ページを越す技術レポートとして完成しています。他の階層が純粋に通信関係の規格化を行うのに対して、この階層ではフィールドバスを使用した計装で必要となる機能の標準化を進めています。このユーザー層の特長はファンクションブロックと呼ぶ機能単位のブロックをソフト的につなぐことにより、計装ループを組める仕組みを提案している点にあります。

互換性とインターオペラビリティ

 そもそもプロセス制御分野でのユーザー層の規格化の必要性が認識されたのは、現状の現場計器が持っている互換性をフィールドバス対応の計器にも要求したいと考えた時点から始まっています。たとえば、検出する圧力レンジが同じであるDC4~20mA出力の差圧伝送器は異なるメーカーの製品でも通常、互換性があります。このような互換性をプロセス制御で必要とするフィールドバスに対応した各種の計器に対しても要求することは当然のことと考えられます。しかし、話は非常に複雑になります。DC4~20mA出力の計器は1変数のデータをやり取りするのに対して、フィールドバス計器では多数のデータを双方向に通信することができます。したがって、こうしたデータの意味を統一しなくては異なるメーカーの計器間での互換性を保てないためです。
 別の例を考えてみます。現状では複数の計器で実現している機能を、フィールドバス計器ではそれらの機能をまとめて1台の計器に詰め込むことができます。たとえば、PID制御機能を組み込んだ差圧伝送器が実現すると、そうした機器の互換性を保つにはPID制御機能のアルゴリズムや制御モードなどまで統一する必要が生じます。逆にこうした点をすべて統一すると、メーカーサイドでは特長のある機器を商品化できない恐れも出てきます。
 こうした背景から、ユーザー層委員会の中では互換性とは別にインターオペラビリティ(相互運用性)と呼ばれる実現的な概念が提案されています。たとえば、異なるメーカー製のPID制御機能を詰め込んだ現場機器があるとします。これらの機器はPID制御のアルゴリズムが異なっていてもPIDのチューニングを変えて異なるメーカー製の機器同士がほぼ同じ機能を実現できれば、インターオペラブルであると呼びます。
 ユーザー層委員会では、プロセス制御分野で使われる機器の互換性やその概念を拡張したインターオペラブルビリティを保つ仕組みをファンクションブロックに対して提案しています。こうすることによって、フィールドバス計器の互換性やインターオペラビリティを実現しようとしています。
 次号ではその内容を紹介することにしましょう。

     








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