世界のフィールドバス事情 第23回
ISAでのフィールドバスの標準化
(その20)



(株)エム・システム技研 開発部 主管技師

 
ファンクション ブロックのモード

 今回はファンクション ブロックの制御モードに関するSP 50の提案について考えてみましょう。はじめにパネル取付形の調節計の制御モードの仕組みをふり返ってみます。そうした計器では、計器前面の制御モード切換え操作ボタンを操作することにより調節計の制御動作を切り換えられます。メーカーによらず、通常、調節計には制御モードとしてオート、マニュアル、カスケードが備わっています。オートとマニュアルは制御出力を規定します。モードがオートであれば、調節計の出力を調節計が自動的に演算して出力します。マニュアルであれば、人間が計器前面の操作出力増減ボタンを操作して任意の出力値を設定できます。カスケードは制御ループの設定値に規定します。すなわち、上位ループの操作出力を設定値として取り込みます。
 SP 50では、こうした一般的なモードを拡張し、フィールドバスのファンクション ブロック用として、次の8種類のモードを提案しています。
 (1)O/S(Out of Service)
 ファンクション ブロックが機能していない状態。たとえば、ブロック間を結線中の段階がそうした状態にあたります。
 (2)IMan(Initialization Manual)
 ファンクション ブロックの出力を初期化している状態。
 (3)LO(Local Override or Locked Output)
 物理的出力を駆動するファンクション ブロックに適用されるモードです。操業の都合上、現場でファンクション ブロックの出力値の固定が必要になることがあります。現場で出力値が固定された場合、このモードになります。このモードでは、フィールドバス経由での出力値の操作はできません。
 (4)Man(Manual)
 (5)Auto(Automatic)
 (6)Cas(Cascade)
 これらは、パネル取付形調節計におけるマニュアル、オート、カスケードの各モードと同様の意味で使われています。
 (7)RCas(Remote Cascade)
 上位計算機が調節計の設定値を操作する制御方式は通常SPC(Set Point Control)と呼ばれています。複数台のボイラを並列運転するシステムについて考えてみます。そこでは、負荷に応じて、計算機により各ボイラの最適負荷配分を線形計画法などで求め、各ボイラの設定値を決定することが考えられます。こうした用途にSPCが活用されます。SP 50では、調節計の設定値を上位システムから受け取るモードをリモート カスケード(RCas)と呼んでいます。
 (8)ROut(Remote Output)
 歴史を振り返ると、1960年代に上位計算機が直接バルブなどの操作信号を操作する制御方式が試行され、DDC(Direct Digital Control)と呼ばれました。この方式では計算機が調節計の代わりにプラントの制御を担当し、アナログの調節計は計算機が故障したときのバックアップ機器として使用されていました。アナログ調節計の制御方式がPID方式だけに固定しているのに対して計算機では制御対象にあわせて高級制御方式を柔軟に組み込める点にこの方式のメリットがあります。この機能は現在のDCSにも残っていますが、DDCなる名称はこの場合混乱を与える恐れがあります。その理由は、ほとんどの調節計が現在デジタル化されてデジタル制御方式となっているためです。そこでSP 50では、このDDCモードをリモート出力(ROut)モードと名付けています。

     
















































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