世界のフィールドバス事情 第25回
ISAでのフィールドバスの標準化
(その22)



(株)エム・システム技研 開発部 主管技師

 
分散配置されたファンクション ブロックの制御

 通信ネットワークを利用した分散処理技術は急速に身近な技術となりつつあります。たとえば、そうした技術をベースにした企業内LANやパソコン通信により、遠く離れた場所にある文字情報をはじめとして様々な情報を、あたかもすぐそばにあるように扱えるようになりました。フィールドバスも同様の技術をベースにしています。ただしフィールドバスでは、ネットワーク上に分散配置された複数のファンクション ブロック(以下ブロックと略称)同士がネットワークを通してリアルタイムにデータの交換を行える機能が必要です。
 今回はこうした仕組みを検討したローズマウント社のJay Warrior氏などの論文*に沿って考えてみましょう(*Working Paper-Coordination of Distributed Processes、1990年6月のISA Raleigh会議での配布資料による)。
 図に示す石油精製プラント中の加熱炉の制御を考えてみます。加熱炉にフィードされる原料は燃料の燃焼により加熱されます。加熱炉の出口温度を制御するために温度制御ループがあります。この制御ループへの外乱要因として操業状況の変更による原料流量の変動があります。この外乱の制御量への影響を抑えるため、炉への原料のフィード流量を常に計測し、流量の変動に対応して適切な燃料流量を素早く設定できるフィードフォワード制御を組み込んでいます。
 このシステムをフィールドバス対応の計器で計装するには、フィールドバス対応の様々な計器が存在すると仮定すれば、次の4台の複合機能を持つ計器によって実現する方法が考えられます。
 I.フィード流量用発信器
 流量の検出と演算機能(フィードフォワード制御演算用)
 II.温度発信器
 温度検出、PID制御機能および演算(加算)機能
 III.燃料流量用発信器
 IV.バルブポジショナ
 バルブの制御機能とPID制御機能
  ここで、流量制御や温度制御の各制御ループは、一定周期ごとに入力処理、制御演算処理、出力処理のデジタル処理をこの順番で繰り返すことにより実現できます。フィールドバス システムの場合はDCSと異なり、これらの各処理が物理的に異なる計器に分散配置されたファンクション ブロックとして実行されます。こうした状況下でも各計器間で時刻の同期をとりつつ、各ブロックの処理を決められた順番に実行する必要があります。
 時刻の同期をとるため、特定の計器が一定時間ごとにネットワークに時刻合わせのメッセージを一斉放送する手法が提案されています。ネットワークに接続された他の計器は、時刻合わせのメッセージに基づき自己の時刻管理を行い、ブロックの実行タイミングを制御します。こうしたネットワークの時刻管理の手法は、分散配置された各ブロックの実行タイミングの制御の際有力です。

     










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