世界の計装事情  第1回
計装・制御動向の注目点


風早 正宏
MKKインターナショナル


 30数年前に「計測の動向」などの記事を多数書きました。当時はアメリカと日本との技術格差が大きかったので、アメリカの学会誌や業界誌の記事紹介を主体とすることができました。今は、先進国間の技術格差が少なくなりました。そのうえ、日本、アメリカ、ドイツ、フランスなど独自の市場ニーズを強調するようになってきました。このために、「世界の計装事情」は画一的に説明できるものでなくなってきています。
 そこで表題の難しさを痛感しました。一方、経済学に素粒子論のような不確定性原理がとなえられていて<注1>、『業界の状態を正確に知ることと、それを使って利益を得ることとは同時にはできない』と言うのです。事情記事の精度を上げようとして研究調査を興こしても意味がないことになります。私なりに、すでに観察していることを個性のある数編にまとめることにしました。
 目次がわりに、計測・制御動向の注目点を表1にしました。これを今後の道標に使います。

 技術の普及

 ここ20~30年の間に工業用計測・制御技術は広く普及しました。この間に計測・制御技術者がユーザーにもメーカーにも累積され、平均年齢が上りました。技術的新味がなくなって、専攻する大学生が減っています。学会に出席して、新鮮な人の流入が少なくなって業界に新技術を培う基盤が薄れていることに気付きます。
 メーカーはコンピュータ技術(とくにパソコン(PC))を広く導入して来ていますが、ユーザーが自分の事務室や自宅で使っている物と本質的に変らない部分がたくさんあります。この方面ではユーザーとメーカーの技術格差が非常に減っています。
 技術の普及は業界の経済規模を拡大しましたが、類似製品の氾濫にもつながりました。技術格差の減少と相まって、メーカーの収益力と技術再投資力を弱めています。これは健全な業界発展のために由々しい問題であります。

 機能

主な機能は表1に列挙した通りです。機能を実現する手段はアナログ方式からコンピュータ方式へと変化しましたし、機能の居所も変わりましたが、本質的変化はありません。たとえば、現在のDCSにウィンドウ表示されるものは40年前の計器グラフィックパネルの分割、縮少に過ぎません。
 これは、必要機能が半世紀前に出つくしており、それを変えるような強力な理論がフィード バック理論以来出なかったことを示します。
 このためか、メーカーもユーザーも保守的になり、新技術、新製品の受け入れが遅くなっています。業界情勢を話す時間として、「最近」とは、ここ5~6年のことで、「近年」とは10~15年前を指すとして良いと思います。変化の早いパソコンの世界では私どもの「近年」は、「昔は」と呼ばれる時間と思います。

 製品化と陶汰

 メーカーの技術副社長をしていますと、自分で技術誌に目を通し

     


















































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