ますし、大学や発明家から新しい理論やアイディアを持ちかけられます。業界にはたくさんの理論やアイディアがあります。しかし、その中で製品化できるものとなると皆無に近くなります。
 30年来、最適制御用製品が繰り返し話題に上がります。この基礎理論であるオペレーションズ リサーチを調べると、メーカーが大量に作れるものになり難いことがわかります。最近の人工頭脳(AI、EXPERT SYSTEM)も同様です。個々のユーザーで有利に使える所はあっても、メーカーがハードウェアかソフトウェアとして大量生産化できるような理論が出ていないのが関係者の悩みです。
 製品化で陶汰された新理論、新アイディアは、さらにユーザーから見たコスト、信頼性、容易さ(使い易さ、保守のし易さ、買い易さ)によってさらに陶汰されます。近年ではPLCとコリオリ式質量流量計が陶汰に残っていると言えましょう。

 製品化手段

 マイクロプロセッサ(μP)、パソコン(PC)やワーク ステーション(WS)の計測制御製品への導入は目覚ましいものがあります。メモリー価格の低下で、多くの機能をソフトウェアで実現するようになりました。ISA 94ショーでは、新興ソフトウェア専門会社の4社が在来大メーカを凌ぐ大きさの小間でソフトウェアを実演していました。ソフトウェア会社の設立には大資本はかかりませんから、この傾向は進むと思います。これは、パソコンとワーク ステーションの価格低下、信頼性の向上、オープン化と相まってDCSの価格低下をもたらすと予測します。この傾向を利用することはユーザーにとっては有益でしょう。しかし、DCSを主製品とする在来メーカーには経営対処を迫ることになります。業界勢力図が書き替わる可能性も含んでいるでしょう。

 製品規格

 4~20mA信号は、ANSI/ISAS50.1-1972規格に規定されています。これは国際規格でもあります。このように規格が成立し業界に受け入れられますと、各国国内業界成長に役立ち、自由貿易の促進にもつながります。逆に、物によってはドイツのDINのように自国市場保護に使われ、貿易障壁と変身することもあります。製品規格は業界事情を考えるのに重要な部分となっています。
 新規格の作成となると、企業間の利害対立と国粋主義的な動きが絡まって物によっては数年から10年以上もかかります。この間、規格作成に参加する会社の資源負担(人員、資金、設備)は大きいのです。一例は、フィールドバス委員会です。私は作業統一を計って努力をしたことがありますが、企業利害を代表する委員間の連衡合従(れんこうかっしょう)に痛手を受けて終わりました。その後、似たような努力が続けられましたが、難航だったようです。この規格成立には3~4年はまだかかるでしょう。
 このほかに、プラントの安全停止やバッチ制御など有用な規格の作成が比較的順調に進んでいます。ご注目を喚起します。

 市場の拡大と複雑化

拡大と複雑化は、メーカーが製品販売する場合だけでなく、ユーザー自身も技術輸出を通して痛感されていると思います。先進国市場と途上国市場、FAとPAの重なりから観察すべきと思います。
 以上、連載をはじめるにあたり、概論を述べました。(文責は筆者)


<注1>D.N.McCloskey,“An Ecnomic Uncertainty Principle”,p.107,Scientific American Nov.'94.

     

風早 正宏
MKKインターナショナル
社長
学術博士

《著者略歴》岡山大学理学部卒。同大学より学位取得。米国ペンシルバニア大学ワートン・スクール大学院より経営学修士(MBA)を取得。1954年より1967年まで、旧北辰電機製作所勤務。退職時は技術統括担当(部長)。1967年より1994年まで、同社元技術提携先米国フィッシャ・アンド・ポータ社に勤務。退職時は技術・営業・経営計画担当副社長。この間に、12年間、母校ワートン・スクール大学院で学外講師を努める。授業活動としてフォード・モータ社などの経営分析をする。1994年、米国内でMKKインターナショナルを設立、経営・技術コンサルタントと執筆業を開始。



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