工業計測の現状と動向  第4回

温度測定(その1)


松山技術コンサルタント事務所 松山 裕


1.温度測定法の動向

 温度測定法は、大きく接触式と非接触式に分けられます。前者の代表は、おなじみの熱電式と抵抗式ですが、他にも多くの種類があります。後者は事実上放射式測定法のみと言ってよいでしょう。
 温度測定法の動向を大ざっぱにまとめると、下記のように言えます。
 (1)共通的なテーマとしては、温度に関する定義が大きく変ったことと、国際温度目盛が何回も改訂されたことです。後者は、最近では1990年に改訂されました。
 (2)熱電対・測温抵抗体共に、国際的に規格が統一され、これに伴ってJISも何度か大きく改訂されました。最近では、1989年に測温抵抗体の規格が、今年7月に熱電対の規格が改訂されました。
 (3)接触式温度計では、各種の光ファイバーを使用した温度計が開発され、続々製品化されています。
 (4)放射温度計では、放射率補正に関する研究が各所で行われ、一部は製品化されていること、かなり安価な製品が市場に多く出ていること、があげられます。
以下この順で説明を行います。

2.温度の定義および国際温度目盛の変遷

 温度の定義および国際温度目盛の変遷は、とりもなおさず温度の単位の歴史と言ってよいのです。
 現在の温度目盛は、いわゆる摂氏目盛に端を発しています。摂氏目盛は、1742年のスウェーデンのセルシウスの考案になるもので、水の沸点を100度、同じく氷点を0度とし、その間を100等分したものです。また、この範囲より高温側や低温側は、この目盛を外挿しました。ここで問題となったのはこの100等分の仕方です。液体の膨張によって目盛ると、液体の種類によって0度と100度の間の目盛や、外挿部分の目盛が変ってしまいます。けっきょく、イギリスのケルビンが提唱した、熱力学の法則に基づいた目盛が採用されました。そのため、この目盛を熱力学温度目盛と言うことになりました。
 しかし、この熱力学温度目盛を精度よく実現することは、温度の専門家でも非常に困難です。より実現性の高い方法として、国際温度目盛が提案され、1927年、国際度量衡総会で採択されました。この1927年国際温度目盛は、下記の3つの柱から成っています。
 (1)いくつかの再現性の良い温度定点(酸素の沸点、水の氷点、水の沸点、銀の凝固点など)を選び、これらに熱力学温度目盛にできるだけ近い温度値を与える。これを定義定点という。
 (2)定義定点間は、白金抵抗温度計と白金ロジウム熱電対(ロジウム10%)を使って補間する。
 (3)補間のための温度計の示度と、国際温度目盛の関係は公式で指定する。
 その後、熱力学温度の定義は、1954年に大きく変更されました。この定義では、“水の三重点を温度の唯一の基準点として選び、これに熱力学温度として273.16ケルビンを与える。さらに、この1/273.16を1ケルビンとし、熱力学温度の単位とする”としました。ここで熱力学温度は、目盛ではなく単位になったのです。また、旧摂氏目盛はセルシウス度と名前をかえ、273.15ケルビンをセルシウス度の原点0℃とすることになりました(すなわちセルシウス度は、熱力学温度から273.15を引いた値となる)。なお、水の三重点とは、液相の水と固相の水(氷)と気相の水(水蒸気)とが平衡状態を保って共存する点をいいます(図1参照)。水に限らず、三重点は再現性が非常に良いので、定

     














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