の実現となりました。電子式調節計もDDCとμPを採用して、室内設置用μP調節計として生き続けています。
 図3にDCSのブロック図を示します。制御室にCRTと操作キーボードと分散型制御ユニット(DCU)が設置されました。現場の変換器と調節弁はDC4~20mA標準信号でDCUに接続されています。以前の大きなグラフィックパネルはCRTのウィンドウの中に縮小されました。計器盤上のスイッチなどはキーボードへと移りました。これで顕著な計装コストの節減と使いやすさの向上が実現しました。
 DCSは数多くのμPとメモリを使っています。PIDは15Kバイト前後のプログラムとなって、外のプログラムと一緒にメモリの中に姿を潜めてしまいました。これが現在の計装の主流です。

計装の再分散化

 これからの変化を観察しましょう。
 1980年代に、変換器にμPが採用され、いわゆるスマート変換器になりました。信号もDC4~20mAにデジタル情報を重畳するスマート信号となりました。スマート変換器で、μPも関連部品も低温(-40℃)、高温(85℃)、埃、腐触ガスがある現場でも信頼性があることが実証されました。
 そこで、PIDも同じμPに同居させてしまう思想が生まれました。「計装の再分散化」です。1992年にMOORE PRODUCTS社がPIDをスマート差圧変換器に内蔵して発売しました。その翌年には現場型μP調節計を発表しました。VALTEK社は、調節弁ポジショナにPIDと流量測定を入れています。
 計器間をデジタル通信で結ぼうとするのがフィールドバスです。その規格化の中でもPIDを現場に戻すことがすでに準備されています。
 図4は現場型μP調節計(PID)を使った計装を想定したものです。変換器、調節計、調節弁ポジショナは現場で接続されています。一方、制御室では、プラント状態を把握するためのCRT表示と、操作キーボードがDCSから踏襲されています。DCUは入出力切換やPIDを失って、主として通信機能を受け持つようになり、その名称も変わることでしょう。
 制御室と現場の間は、いわゆる「鳥の足式配線」にして、1対の電線で、1ループから数ループの信号と電力を取り扱うことができます。DCSから見ると信号線設備費の節減になります。
 1994年ISA学会で、フィールドバス試験の結果報告がされました(注1)。メーカー6社が試作器をモンサント社の工場に持ち寄って行った実験についてでした。
 試作器では、PIDはすべて変換器かポジショナに内蔵されていました。今やPIDは独自の居所を失って行っています。
 試験フィールドバスシステムの利点として、30%の配線コストの節減、新計装立上げのしやすさと時間の節約、保守の容易さなどが列挙されていました。
 以上のように、PIDは新技術ごとに居所を変え、そのつど、ついには形がなくなるまで姿を変えて進化しました。技術変化は総合コストと信頼性と容易さにより淘汰されて来ました。この業界原理は働き続けることと存じます。
(文責は筆者)

(注1)J.D.WHEELS AND K.ZECH,ISA94 PREPRINT VOL.49 PART2,pp.563-569

     

風早 正宏
MKKインターナショナル
社長
学術博士(Ph.D)



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