世界の計装事情  第4回
ユーザーのための完全競争市場へ


風早 正宏
MKKインターナショナル


 本編では、計測制御マーケットがミクロ経済学の言うユーザーに有利な完全競争市場の様相になってきていることを説明します。終わりにユーザーの協力で、この傾向をさらに促進することを提案します。

相場物と完全競争市場

 鋼材、電線など素材産業製品は、メーカーを問わず製品がほとんど均一になっているので、相場で取り引きが決まります。このような製品を相場物(COMMODITY PRODUCT)と呼び、そのマーケットを完全競争市場と言います。ミクロ経済学によれば、完全競争市場は独占市場と反対で、ここでユーザーは有利に製品が買えます。

計測制御製品の相場物化

 計測制御産業の形成期には、メーカーはそれぞれ特異な存在意義をもっていました。2、3の例を挙げれば、FOXBORO社の空気式差圧変換器と空気式調節計はよく設計、製造されていました。LEEDS & NORTHRUP社の電子式自動平衡計器は信頼性に優れていました。FISCHER & PORTER社の熱電対変換器は3mVと狭いスパンでも精度がありました。
 近年、技術が普及してメーカー間で製品が均一になり相場物化が進みました。とくに、ICが進歩して安価になり、μPが導入されると、この傾向は一層進みました。たとえば、差圧変換器をとってみると、いずれも似たような金属材料を使い、レンジ アビリティ10:1内で精度は±0.1%です。したがって、各メーカーの巧妙なカタログ表現ほどには違いはありません。実際の価額も世界マーケットでは大同小異です。DCSについては世界に20数社の製品がありますが、多くは似通った製品です。ここ2、3年の間に、WONDERWARE社、PID社、INTELLUTION社などSCADA、バッチ制御、オペレータ ステーションのソフトウェア専門メーカーが成長し、一方RAPID SYSTEM社、IBMなどが工業用PCを発売しているため在来メーカー以外の会社や個人でもDCSを容易に供給できるようになりました。熱電対変換器など純電子式変換器類の相場物化はさらに進んでいます。

排他的な閉鎖通信プロトコル

 計測制御マーケットの完全競争市場化への様相は進んできていますが、さらに完全競争になれば、メーカーは技術、機能、品質、価額の点でますます競争するため、ユーザーにとってはいっそう有利になります。好ましいのは、ユーザーがSCADA、オペレータ ステーション、制御ユニット、変換器、操作端などの計測制御機器をそれぞれに専門メーカーから個別に買って、これを自由に組み合わせて管理・制御・調節システムが組めるようになることです。ここでメーカーは開放的にもなります。
 このような傾向は、DC4~20mAが主要信号であった電子式計器時代には、急速に進んでいました。ユーザーはマーケットで一番良い差圧変換器、その他の変換器、調節計を別々のメーカーから個別購入し、DC4~20mA信号で接続してシステムを作りました。調節弁についても同様でした。差圧変換器のROSEMOUNT社、質量流量計のMICRO MOTION社、その他エム・システム技研、

     




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