ROCHESTER社など輩出した電子式変換器メーカーは、DC4~20mAがもたらした計器個別購入の申し子たちです。
 このような可能性を最初に妨げたのがDCSバス、PLCバスなどメーカーごとの閉鎖通信プロトコル(CLOSED PROTOCOL)でした。1975年ころのDCS、PLC初期には、各メーカーとも制御ユニットとオペレータ ステーションを接続するバスを自作するのに手一杯でしたので、意図的に閉鎖したのではありませんでしたが、メーカー系統別にマーケットを分割する結果になりました。分割された中は独占市場的になります。
 次に出たスマート信号は完全競争化をさらに妨げました。変換器類の売上が多いROSEMOUNT社はそのハート プロトコルを公開(OPEN)しましたが、ほかの主要メーカー(複数)は、近視眼的営業政策のもとに各々のスマート信号を公開しないだけでなく、これを使ってDCSには自社あるいは関連会社の変換器、操作端を限定して接続するように動きました。したがって、ユーザーが1社のDCSを採用することは、そのメーカーの技術的とりことなり、ユーザーの企業リスクを高めることになりました。
 このような閉鎖性を排除しようとすることが、フィールドバス規格作定の目的の1つです。規格統一されたフィールドバスを採用することの意義は、経済論的には、デジタル時代に違うメーカーからの計測制御機器を自由に組み合わせてシステムが組める機器個別購入の可能性を取りもどすことです。ユーザーには、とりもなおさず特定メーカーへの依存度を少なくして、企業リスクを下げることです。
 しかし、この作業が遅れています。規格作成委員の一人としての私見では、遅れは規格作成委員会内でメーカーごとの思惑が葛藤しているためです。これは近視眼的に過ぎます。国際的メーカーは苦しいが開放的自由競争こそが長期にわたる業界の繁栄をもたらすと言う経済原理を思い出さねばなりません。

ユーザー間協力の必要性

 この葛藤を断って、機器個別購入が可能な完全競争市場へと導くには、その利益をもっとも受けるユーザー間の協力が必要です。このような動きは、ドイツ化学工業会(NAMUR)に見られます。バッチ制御の標準化、DCSでの安全性の要求などをNAMUR仕様としてメーカー側にぶっつけてきました。
 日本のユーザーが中心になって同様の動きを通信プロトコルについて行うことを勧めます。フィールドバス規格作成委員会にはユーザーのEXXON社、CHEVRON社、DUPONT社などが、各々一員として出席していますが、まずユーザーとしてまとまった要求を作った方が影響力が出ます。
 要求は、化学、石油、鉄鋼、金属、パルプなどの産業で管理・制御・調節に何が必要かをまとめたものにするべきです。ユーザーが通信プロトコルを設計する必要はなく、自分達のシステムでは何が必要かを記述すれば充分です。
 通信技術者は、フィールドバス規格の対象を自分達の専門範囲に限定しがちですから、ユーザーとしてはユーザー層まで含めることを勧めます。(文責は筆者)

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ハート プロトコルへの動き

 本編の校正中に、ハート プロトコルに長年対抗していたアメリカの大手メーカーが、その採用とハート製品を近く発表すると聞きました。これでアメリカ、ヨーロッパではスマート信号の統一実現に近づきました。元ハート使用拡大活動グループの執行委員として、私は歓迎をしました。
 ハート製品がアメリカ、ヨーロッパで実際に作られだしてすでに6、7年になりますが、フィールドバスは規格作定にこれから3、4年はかかると言われます。それから製品が出だすとして、現在のハート製品の普及レベルに到達するのは、約10年先となるでしょう。したがって今、ハート プロトコルを採用することは、ユーザーにもメーカーにも採算が取れることと思います。
【風早 正宏・MKKインターナショナル】

     

風早 正宏
MKKインターナショナル
社長
学術博士(Ph.D)



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