世界の計装事情  第5回
メーカーによる特異化


風早 正宏
MKKインターナショナル


 前回は、ユーザーに有利な完全競争市場への移行促進を進言しました。今回は、このようなマーケットでのメーカーの対処方法である製品の特異化(PRODUCT DIFFERENTIATION)<注1>について考察します。

必要な競争と特異化

 ユーザーに有利な完全競争市場は、メーカーに不利と考えるのは単純過ぎます。多くの営業マンが夢見るように、マーケットが企業に分割されると、企業はむしろ衰退します。競争の中でこそ、企業は努力し、自らを活性化します。成功した者は成長し、利潤を上げます。衰退と成長の例は、経済の世界では数多くあります。
 たとえば、1970年代、アメリカ自動車業界はCHRYSLER社1、FORD社2、GENERALMOTOR社4(倍々)と寡占固定的マーケットシェアに安住していました。そのため技術的に停滞し、車の品質、耐久性は低下していました。社内労働問題も山積し、利益は低迷していました。この弱味に、ドイツ車、日本車、後には韓国車などが参入して、アメリカ自動車業界は再び激しい競争時代に入りました。
 三大メーカーは、この対応に多角的企業努力を重ねました。最近は改善して、主製品の大衆車ではアメリカのメーカーが日本、ドイツのメーカーより高い顧客満足度を得ているとの統計<注2>が出ています。そのうえ、今期はFORD社もCHRYSLER社も創業以来の最高利益を見込んでいます。
 競争の激しい完全競争市場、あるいはそれに近い状態では、既存メーカーでも競争に引けを取れば退去させられます。それに代わる新しいメーカーが、普及技術を使って次々に現れます。そこでメーカーは製品やサービスを他社に勝る特異なものにして売上を上げ、特異な製品やサービスを多く持って会社全体を特異化しようとします。これが相場物化に対する特異化です。

ユーザーの機能レベルとメーカーの技術範囲

 田村仁はユーザー会社を上下方向に、企業、工場、プラント、単位プロセス(ユニット)、ローカル ステーション、装置・計器の6レベルに区分けしています。さらに、各レベルの機能を計画・管理から自動化機器までに対応付けています<注3>。表1の左半分に多少変更して転載しました。この表はユーザーニーズの区分とも言えます。
 これに対して計測制御機器メーカー群の得意技術範囲を、プラントの設計・運転ノーハウを中心とするアプリケーション、DCS、PLCを含む制御技術、検出端・変換器、操作端に分類し、表1の右半分に対応付けました。
 機能レベルを、工場、企業と上部まで具体的に対象とするのは最近の動きであり、ISA SP 88バッチ制御規格(案)の標準モデルでも、表1と似たように、全レベルを規定しています。

相場物の特異化

 前回観察しましたように、DCS、

     


















































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