PLC、SCADA、調節計、指示計、記録計、差圧変換器、純電子式変換器、調節弁と、ほとんどの計測制御製品が相場物化してきています。相場物では、各社とも充分な品質の製品を作り、マーケット価額で売っているので、「よく言われる高品質、低価額は陳腐な営業方針」となりました<注4>。
 これに代わる新しい価値を作り出して提供しなければなりません。
 まず、マーケット価額で利益が出せるように、会社総コストの低減を図ることです。このうち、会社が新製品開発をするように独自の新生産技術の開発にも投資し努力することが重要です。このようにして確保した利益をときに応じてユーザーに還元します。その代表例はENDRESS+HAUSER社やEMERSON社ROSEMOUNT事業部があります。
 製品技術が世界で均一化していて、他社に差をつけにくいので、使い易さで特異化を図る努力がなされています。DCS、PLCのGRAPHIC CONFIGURATIONを中心とするビルダー、故障の自己診断、高周波妨害対策などがこれにあたります。
 また、国内、国際規格を製品に取り入れることです。このような規格としては本質安全、防爆、妨害電波発生防止、対使用者の製品安全等々があります。規格に合った製品はユーザーに使い易いだけでなく、ユーザー工場の保険料の低減などの利点がありますので、他社に先駆けて実施すれば特異化になります。
 さらに、買い易さもあります。ここでは流通チャンネルの整備、確実な短納期などの実行が考えられます。
 以上は新しい価値提供の例の一部です。

特異技術の拡大

 メーカー技術ですでに特異なものは拡張すべきです。表1の中で、企業、工場の上位レベルの技術は大型コンピュータメーカーが得意とするところでした。コンピュータと通信のオープン化により、プラントレベルから上方に向かって参入が可能になってきました。これは本業界の拡大です。
 プラントの設計・運転のアプリケーション技術は取得しにくい代わりに、容易に相場物化するものとは考えられません。化学、石油、食品工業などで広くアプリケーション技術を持つFOXBORO社は「(計器類だけでなく)総てをお任せ下さい」と宣伝しています。BAILEY社は電力用ボイラーのアプリケーションに優れています。日立、東芝、SIEMENS社など重電部門がある会社は当然、重電アプリケーション技術を持っています。私がいたFISCHER & PORTER社は下水処理、工業排水処理ではユーザーの相談にのれる技術レベルを持っていました。アプリケーション サービスができると、その売上げだけでなく、関連製品を有利な立場から販売できます。
 相場物化が進んでいる変換器類の中で、流量計、レベル計、分析計は特殊技術や特異化可能分野を多分に含んでいます。最近の例では、山武ハネウェルの2線式電磁流量計、KROHNE社の直線単管を使ったコリオリ式質量流量計があります。30年前からあった渦質量流量計のアイディアは、1994年に横河電機ではじめて製品化されました。今後も、電磁質量流量計やガス用電磁流量計が開発されると期待します。レベル計ではSAAB社のレーダ式があります。最近レーダー搭載のICができていますから、レベル計も大きく変わるでしょう。
 調節弁では石綿が発癌物質で使用禁止ないしは使用制限になっています。シール用代替材料のポリマーは高低温に弱いので、新技術開発の機会があるところです。(文責は筆者。本文中、論文習慣により敬称は省略)。

<注>一般的には差別化と訳されているが、ここでは意識的に特異化とした。
<注2>CONSUMER REPORT-1995 BUYING GUIDE, p 313.
<注3>田村仁「DCS 高効率利用技術開発の実際」オートメーション 1995/2 pp 48-51。
<注4>M. TREACY AND F. WIERSEMA, "CUSTOMER INTIMACY AND OTHER VALUE DISCIPLINE", HARVARD BUSINESS REVIEW JAN/FEB 93, pp 84-93.

     

風早 正宏
MKKインターナショナル
社長
学術博士(Ph.D)



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