世界の計装事情  第6回
工業規格の功罪


風早 正宏
米国 MKKインターナショナル


 最近、電子工業界でEMC(Electromagnetic Compatibility)規格類に関するCEマークが話題になっています。これを機会に、成立過程から工業規格を分類して説明し、さらに、この功罪について観察します。

国別と国際規格

 計測制御機器は、外筐、安全、妨害電波防止、信号など多くの工業規格に整合するように設計製作されています。製品カタログでは、精度、温度特性などの性能と並んで、どれだけの規格を満たしているかが重要視されます。
 規格には、JIS、ANSI(アメリカ)、DIN(ドイツ)、CSA(カナダ)など国別のものがあります。国別に規格が違う不都合をなくして、国際自由貿易を促進すべく国際規格が作られてきています。これにはIECとISOの2系統があります。これらはスイスに本部があり、各国の規格委員会を下部機関としています。私はIECのアメリカ代表でした。

成立過程による分類

 規格には事後(de facto)規格と合意(concensus)規格があります。
 事後規格は、規格内容のような製品がすでに出回っていて策定されるものです。歴史的に大部分の規格は事後規格です。DC4~20mA信号や防爆関係の規格などがその例です。
作成にあたり、規格内容にはメーカー間の相反する利害が強く結び付いているので、規格案が不成立になったり、成立するにしても長年月がかかります。たとえばDC4~20mA製品が発表されたのは1958年でした。1~5mA、10~50mAなどを使っていたメーカーもあって、その同意を得て標準信号規格になったのは1972年でした。この間14年を経ています。
 合意規格は、学識、経験のあるユーザー、メーカーの代表者が規格作成委員会にアイディアを提供し、検討し、その合意によって作られて行きます。内容が学識経験者のアイディア倒れの可能性もあります。
 そこで、代表者を出している企業で試作品を作ったり、シミュレーションをして規格案を試験しなければなりません。このため、合意規格作成に協力するメーカーは、目に付かないところで大きな人的、経済的負担をしています。そのうえ、どうしても企業の思惑、学識経験者のエゴの対立が出て容易に合意に至らず、作成には長年月かかりますから、負担は長期にわたります。
 合意規格は近年の動向で、PROWAY規格、MAP仕様、フィールドバス(作成中)など通信規格があります。しかし、計装業界は信号関係では良い成績を残していません。MAPはGENERALMOTORS社を中心に通信プロトコルを作って規格にまで持って行こうとする活動でした。その作動デモはランプの点灯に3、4秒かかるという期待はずれで、学識経験者のアイディア倒れの1つの露呈でした。期待はずれの結果とGM社の業績不振と競争相手イーサネットの実績拡大とで、MAPはほとんど忘れられてしまいました。ISA規格になっていたPROWAYも一緒に忘れられています。これは、合意規格は必ずしも実施されないことがある例の1つです(最近、MAPの再活性化の動きもあります)。
 フィールドバスでは、ISA管轄のアメリカ規格作成委員会が外国代表者にも公開されているので、国際委員会の様相になりました。そこでIECと一緒に運営するようになりました。このためIEC/ISAフィールドバスとよく呼ばれます。

     









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