世界の計装事情  第7回
国ごとの技術習慣


米国・MKKインターナショナル
風早 正宏


 世界中で共通に売れる製品は、業界を問わずメーカーの夢です。前回は、国別工業規格がその障害になりがちなことを述べました。加えて、世界共通製品を作るには国ごとの技術習慣を考えなければならないことを、今回は説明します。

製品開発者の独断

 私たちエンジニアはニュートンの法則やマックスウェル方程式のように世界共通理論があることを知り、正しいことは世界共通だと信じる傾向があります。これが、良い製品を作ればどの業界のユーザーにも、どこの国のユーザーにも買ってもらえるべきだと考えるようになるようです。良い製品を開発する原動力として欠かせない気概です。しかし、この考えが行き過ぎると製品開発者の独断となり、メーカーの経営計画上の破綻のもとにもなります。

mV、温度変換器

 mV変換器、熱電対温度変換器、測温抵抗体温度変換器の場合、日本では4線式で室内設置型がもっぱら実施されています(図1)。ここで4線式とは、電源配線2本と出力信号線2本のことです。アメリカやドイツでは、2線式現場設置型が多いです。前者は日本の技術習慣で、後者はアメリカ、ドイツの技術習慣です。歴史的背景が強い技術習慣には一長一短があり、善し悪しは技術的経済的議論で断定できないものが多いです。
 しかし、屋内設置用変換器は0~45℃で使うように設計され、外筐も隙間が多いので、そのままで現場設置にすることはできません。逆に、現場設置型は一般的に高価なだけでなく、計器室に設置するには場所を取りすぎる欠点もあります。
 このように、1機種で違った技術習慣があるマーケットをまかなうのは困難です。

渦流量計の苦戦

 渦流量計は差圧変換器キラーの異名があるように、約30年前に発売されたときから、オリフィスと差圧変換器による流量測定法に取って代わるものと期待されていました。いまだ、それは実現されていません。
 両方とも2線式で装備コストもほとんど変わりません。渦流量計は精度も測定レンジもオリフィスと差圧変換器より優れています。最近の構造は堅牢になりました。また、オリフィスに接続する圧力導管には詰まり易いうえに、もれ易い欠点がありますが、渦流量計には、この本質的弱点がありません。
 ところが、オリフィスと差圧変換器は非常に長い歴史と実績があり、流量測定にはまずこれを考えるといった技術習慣が樹立されています。渦流量計の例は、良い製品が出ても技術習慣は容易に変わらない実例の1つです。
 一昨年、北京大学のシェン教授が、中国では渦流量計の使用比率が他国に比較して高いと話していました。中国の工業近代化が始まったとき、オリフィスと差圧変換器の技術習慣がまだ強くなく、渦流量計と同列に比較・採用されたであろうと考えると、高使用率も納得できます。

“耐圧防爆”対“本質安全防爆”

 可燃性ガスや粉体がある危険区域の計装には、耐圧防爆構造か本質安全防爆構造(本安)の機器を使います。耐圧防爆構造では内器を重厚な筐体に入れて、配線もコンジットに入れ、その開口端は封印して、計器内で発火が起きても筐体内に封じ込めてしまいます。したがって、筐体はアルミニウム合金かステンレス鋼の肉厚構造になり、重くなります。その上、精密な機械加工が必要で、コスト高になりがちです。

     






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