工業計測の現状と動向  第1回

流量測定(その1)


松山技術コンサルタント事務所 松山 裕


 はじめに

 工業計測はパソコンや通信の華々しい発展の陰に隠れ、地味な印象を人々に与えているのではないでしょうか。
 しかし、この分野でも着実に進歩・改良が行われています。この連載では、流量、温度、圧力、レベルなどに分けて、現状と動向について探ってみたいと思います。

 1.流量測定法の動向

 第二次大戦後、しばらくの間は“流量計と言えば差圧式”という時代が続きました。たとえば、昭和24(1949)年に発行された「流量測定並自動調節」(小林悌一郎著)を見ると、差圧式以外はすべて海外の製品によって説明されています。
 その後、日本で開発されたおもな流量計の発売時期を表1に示します<注1>。また、現在の日本における流量計の生産額とその流量計別のシェアを図1に示します。
 戦後の各流量計のシェアの動向は、おおよそ下記のように言えるでしょう。
 I.差圧式流量計のシェアは昔から見るとかなり落ちたが、依然として他を大きく上回り、1位を保っている。
 II.容積式、面積式、電磁式はずっと第2位グループを形成していたが、最近は容積式が減少し、電磁式が伸びている。
 III.第5位以下では、超音波式、渦式、コリオリ式がいずれも3~5%台を保っている。渦式は一時大きく伸びたが、最近はやや伸び悩んでいる。コリオリ式は約8~9年前からシェアが急速にアップしている。これは、オーバルが国産化したことによる。
 なお、熱式流量計は半導体製造業で多量に使用されており、輸入品を含めるとシェアは第2位グループに匹敵すると言われますが、生産統計がないのではっきりはわかりません。
一方、各流量計の間では、下記の理由により、置換の動きが見られます。
 I.圧力損失の低減
 差圧式から渦式、電磁式、超音波式への置換。
 II.従来測定が困難であった流体(高腐食性液、固形物を含む液など)への対応
 電磁式、コリオリ式へのシフト。
 III.メンテナンスコストの低減
 容積式からコリオリ式、差圧式から渦式への置換。
 しかし、これらの動きは比較的ゆっくりです。これは、流量計のようなフィールド機器は、実績がとくに重視されることによるものと思われます。
 総論的な話はこれくらいとして、最近、いろいろな動きが見られる電磁流量計、コリオリ式流量計、渦流量計について、最近の動向と注目点を見て行くことにします。

 2.電磁流量計

 電磁流量計における最近の進歩は、おおむね励磁方式、配線方式、起電力のピックアップ方式とライニング、電極に分けられます。以下、この順で説明します。
 (1)励磁方式
 電磁流量計において必要な磁界を作るのに、約20年前までは商用電源をそのまま使用していまし

     

















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