た。しかし、この方式では電磁誘導によって大きなノイズが発生し、精度の低下を生じ、かつ零点の安定性を悪くしていました。そこで登場したのが方形波<注2>励磁方式です。これは励磁電流に直流電流を使用し、その極性を周期的に切り換えて交流化する方式です。これにより誘導ノイズがカットされ、電磁流量計の性能は飛躍的に向上しました。
 しかし、液体中に固形物があると、これにより低い周波数のノイズ<注3>が発生し、大きな誤差要因になることがわかってきました。そのため、各メーカーともいろいろ苦心して対策をとっています。代表的な対策は2周波励磁方式と高速励磁方式です。前者は低周波と高周波の励磁電流を重畳する方式で、出力を高・低の両成分に分け、フィルターによってノイズ成分を取り除いた後、再び合成します。後者はノイズ成分より1桁以上高い周波数で励磁する方式です。これらの対策により、スラリーノイズの問題はほぼ解決しています。
 (2)配線方式
 電源供給線と信号伝送線を共用する2線式は、差圧伝送器では普及していますが、電磁流量計では実現していませんでした。2線式ではDC4~20mAのうちの、DC4mA分しか伝送器の電源に使えないのですが、電磁流量計ではこれでは不足だったからです。しかし、12年前に愛知時計電機が製品化に成功し、ついで数年前、山武ハネウェルも製品を発売しました。しかし、なにぶんDC4mAでは苦しく、機能に制約があります。そこで専用コンバータを使って制約を除いた、準2線式というべき製品が最近発売されました(図2)。1つは日立製作所の製品で、流量信号をデジタル化し、電源線に重畳したもの、もう1つは山武ハネウェルの製品で、DC4~20mAではなく、たとえばDC16~32mAで伝送するものです。これらの方式では、いずれも電磁流量計と専用のコンバータ間の配線は市販の2芯ケーブルでOKです。
 (3)起電力のピックアップ方式
 一般に電磁流量計は、液中に発生した起電力を検出部左右の電極でピックアップします。しかし、液中にタール、ピッチなどの粘着性の物質があると、電極がコーティングされ、測定が不能になります。
 この問題を解決するため考えられたのが容量検出形電磁流量計です。電極は膜状で、検出部のライニングの下に置かれ、接液していません。液中に発生した起電力は、液と電極の間の電気容量を介してピックアップします。見かけ上、電極が見えないので、無電極形と言っているメーカーもあります。
 この方式の電磁流量計は粘着性の物質を含む液体の測定に強いばかりではなく、純水やアルコールなどのように導電率が非常に低い液体の流量測定も可能です。海外では、以前からこの方式の製品がありましたが、日本では数年前、日立製作所が発売し、また横河電機も今年1月、製品を発売しました。

◆引用文献◆

1)西山 清:低導電率流体への電磁流量計の活用、計装38(6)、p.45(1995)
2)松山 裕:実用流量測定、p.49、省エネルギーセンター(1995)


<注1>初期は試作品の出荷と正式発売時期とが分離されていなかったので、2年くらいの誤差があります。
<注2>矩形波とも言う。
<注3>スラリーノイズと言う。

     

松山 裕
松山技術コンサルタント事務所
所長


《著者略歴》1954年 東京大学工学部応用物理学科卒。同年、(株)北辰電機製作所入社。紙パルプ工業担当営業技術部長、工業計器プロダクトマーケティング部長などを歴任。次いで横河電機(株)に移り、温度計装技術部長、トレーニングセンター部長などを勤める。1990年定年退職し、横河エンジニアリングセービス(株)教育部参与を経て現在に至る。著書に、「流量計測ハンドブック」(分担執筆)、「実用流量測定」、「温度の測定と制御」、「だれでもわかる自動制御」などがある。




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