水または空気を高速で電極表面に噴射し汚れを落とします。洗浄中は、pH計の出力が乱れるため、洗浄開始直前の値に出力をホールドさせます。
 (ニ)薬液洗浄
 pHセンサを測定対象液から引き上げて、センサ下部に蓋をし、ここに小さな測定槽を形成します。この中に薬液を注入し次にエアバブルによって攪拌します。これらの操作は、すべてシーケンシャルに自動的に行います。電極にスケールが固着したときなどには、とくに有効な方法です。
 なお、センサを液から引き上げないで、多量の空気と薬液を連続的にpHセンサ部に送り込み、電極周辺に空気層を生じさせ、薬液が測定対象液によって薄められないようにする方式もあります。

 (3)塩化リチウム液の比較電極への補給

 比較電極の液絡部よりは、塩化リチウム液がわずかずつ流出しますので、ときどき補給することが必要です。この対策としては、大容量のリザーブタンクを使用して塩化リチウム液を補給する方法と、液の流出量を非常に少なくした電極を使用する方法とがあります。後者には、液絡部の構造を工夫する方法と電極内部液をゲル化もしくは固形化する方法とがあります。ただし測定対象液の状態によっては不具合なこともありますので、メーカーに確認するとよいでしょう。

 (4)pH計の自動校正

 pH標準液のpH値は温度によって変化しますが、最近のpH計はこの特性をメモリーしておき、校正をいわばワンタッチでできる製品が増えてきました。しかし、一般にはpHセンサを標準液に浸す操作は人間が行う必要があります。これではやはり不便なので、最近はこの操作まで自動的に行う製品が出ています。これは前述の薬液洗浄とほとんど同じ方法です。すなわちpHセンサ引き上げ-蓋をして測定槽を形成-電極洗浄-標準液A注入-校正-水洗い-標準液B注入-校正-水洗いの操作を自動的に行います。

 (5)電極の自己診断

 ガラス電極のガラス膜の電気抵抗は50MΩ~500MΩ位ですが、劣化するともっと高くなります。またガラス膜が割れれば大幅に下がります。比較電極においても、液絡部のつまりや脱落により電気抵抗は異常値になります。したがって、pH測定中にガラス電極および比較電極の電気抵抗を測定することにより、電極の異常を検出することができるので、この機能を搭載した製品が販売されています。

 (6)pH電極の小型化

 最近非常にコンパクトなpH計が市販されています。ガラス電極・比較電極・温度センサをわずか1mmの厚さに集積した平面センサを使用したもので、ガラス膜と液絡部の間隔は2~3cmです。そのため、一滴(0.1ml)の微量サンプルでもpHを測定できます。このpH計は、センサ部がいわばスプーン状になっているので、サンプル液をすくい取るようにして測定することもできます。これは堀場製作所の製品です。
 小型化では、ガラス電極の代わりにISFET(イオン感応型電界効果トランジスタ)を使用したpH計もあります。センサチップは幅0.5mm、長さ2mm位で、やはり一滴のサンプルでもpHを測定できます。この製品は、新電元工業、オランダセントロン社(代理店 ジャパンマシナリー)が製造しています。

◆ 引用文献 ◆
1)横河電機:pH計技術資料

<注>この図には表示していませんが、温度センサもついています。

      著者紹介



松山 裕
松山技術コンサルタント事務所
所長





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