計装豆知識 フィールドバスの現状と問題 10年余にわたって規格制定と開発が進められてきたフィールドバスが、ようやく実用化に近づいています。フィールドバスの規格は、アメリカにある任意団体 Field Bus Foundationがまとめています。この任意団体の構成員の中心は、世界中の工業計器メーカーです。 日本国内ではフィールドバス製品がまだ出荷されていないため、過大な期待を持たれている面が見受けられます。そこで、フィールドバスがどのような用途と使用条件を対象に開発されたかを紹介し、次いで実用に際しての問題点と、エム・システム技研のパソコン計装における対応についてご説明します。 フィールドバスH1規格の概要 ●ノード数:32個 ●伝送速度:31.25 kbps ●伝送距離:シールド付より対線で約1,900m ●信号線と電源線は同一配線 ●通信手順:トークン・パッシング方式の変形 ●ファンクション・ブロック(ソフト計器ブロック)の標準化 既設DC4~20mA用配線の転用が フィールドバスの前提条件 DCS(分散形制御システム)は、主として石油精製、石油化学、鉄鋼、紙パルプ産業に使用されています。DCSはプラント・サイトの1箇所に設置され、そこから放射状にセンサや調節弁までDC4~20mAの信号線が接続されています。 この既設プラントの制御システムを高度化するとき、新たに配線工事をすると多額の費用がかかります。そこで、既設の配線に複数の機器が接続できるように、フィールドバスの規格が定められました。このネットワーク構造では、フィールドバスの1本のラインには、センサ(差圧伝送器など)と調節弁のセットが接続されるのが最も多い形態です。 日本のDC4~20mA配線はCVV 日本では、DC4~20 mA計装配線、にCVV(制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル)を使用しているケースがたくさんあります。CVVにフィールドバス信号を流すと200 m程度しか伝送できません。したがって、伝送ケーブルにCVVを使用している工場では、フィールドバス用機器にリプレースすることはほぼ無理でしょう。 フィールドバス対応機器の種類が少ない フィールドバス対応機器は、大手工業計器メーカーが販売しているDC4~20mA用機器と同種のものです。すなわち、差圧伝送器、温度伝送器、渦流量計、電磁流量計、電空ポジショナ等です。 フィールドバスの採用を検討する場合、これらの機器で計装できる範囲に適用分野が限定されます。 多数のフィールドバス配線を束ねるための機器はDCS プラントを計装するためにはたくさんのフィールドバスを使用します。このフィールドバスを束ねて制御する役割を果たすのがDCSです。したがって、現時点ではDCSを使用する大規模システムがフィールドバスの適用対象になります。 一方、最近パソコン計装が流行していますが、複数のフィールドバスを束ねてデータ交換を行いパソコンに接続するための機器(ゲートウェイ)の規格はまだありません。 MsysNetシステムによる解決 エム・システム技研では、フィールドバスの目的をパソコン計装において日本の現状に合わせて実現しています。以下にその主な関連仕様を示します。 ●パソコンと直結できる伝送速度19.2 kbps ●ネットワークを接続するゲートウェイ開発済み ●変換器にDCS機能を搭載 ●フィールド信号はDC4~20mA (フィールドバス用インタフェースも開発予定) |