ネットワーク計装部品 MsysNetのシステム構築例
スーパーDCSによる 適応形むだ時間補償制御



(株)エム・システム技研


 はじめに

 スーパーDCS(注)のアプリケーション例として、今回はスミス調節計を応用したむだ時間補償制御をご紹介します。
 プロセス制御におけるむだ時間要素は、たとえば、物体の移送遅れ、センサによる検出遅れ、また操作端のヒステリシス特性による応答遅れなど、様々な形で存在します。一般に、PID制御のようなフィードバック制御系においては、閉ループの中に長いむだ時間要素が存在すると、制御性が悪化したり、制御が難しくなります(むだ時間の影響の目安として、プロセス特性をむだ時間Lと時定数Tで近似した場合、L/Tの値が0.5を超えると制御が難しくなるといわれています)。
 このようなむだ時間の長いプロセスの制御性を改善する方法の1つとして、O. J. Smithの提案したむだ時間補償制御法(通称スミス調節計)があります。

 1. スミス調節計の原理

 図1にスミス調節計によるむだ時間補償制御ループのブロックダイアグラムを示します。図1における等価変換後の形から明らかなように、補償器の存在によってむだ時間要素が閉ループの系外に出たことになるため、調節計のゲインを高くして速い応答特性を持たせることができ、制御性が改善されます。
 ここでの重要な条件は、補償器のパラメータ(とくにむだ時間要素)がプロセスの特性と良く適合している(理想的には完全に一致している)ことであり、両者が大幅にずれた場合には、補償の効果を期待できません。

 2. スーパーDCSによるスミス調節計

 スーパーDCSによるスミス調節計の応用として、製紙工業におけるパルプ濃度の制御(図2参照)を例にとり概要を紹介します。
 図2では、検出点におけるパルプ濃度を一定に保つために、上流側でパルプ液に注入する希釈水(白水)の量を調節しています。ここで、パルプ液が管路、スタティックミキサ、およびポンプを通過する時間がむだ時間となり、制御性を悪化させる要素になっています。なお、このむだ時間はパルプ液の流速(流量)に反比例して変化します。
 図3および図4に、本例においてむだ時間補償制御を実現するスーパーDCSのシステム構成、およびソフトウェア構成を示します。

     




























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