で十分です。他方、展示品はすべて動作するものではなくてはならないとするのは、メーカー経営者として投資効果の認識不足です。どの程度まで外函だけでよいかは道義的判断が必要で、行き過ぎると張り子になります。
 時効になるほど古い例ですが、大手メーカーの1つがDCSを一番乗りに展示しようとしながら、展示品を期限までに完成できませんでした。そこで、アラーム表示もループ表示もトレンド記録も、すべてをVTRに作りオペレータステーションのCRTに再生して展示しました。CRT以外、DCSは全然動作していません。説明員はVTRから映し出される画面にあわせて押しボタンを押していたのですが、演技が良くて、見学者はボタンを押したので画面が変わったと錯覚させられました。全くの張り子でした。このように、ソフトウェアの張り子はハードウェアの外函展示より巧妙になっているので、ソフトウェア展示を見るときは眉唾物を見極めなければなりません。

 4)モデルや役者

 ISA/95でIntellutionがコメディアンを使って掛け合い漫才をしながら、社名と製品名を宣伝していました。コメディアンが台詞を覚えていないので、台本を手にしていました。練習不足で計測とソフトウェアの専門用語をとちったり、2人の掛け合いの間が抜けたりしていました。4日目になっても台本を手にしていました。参観者は説明よりも愚かさ加減を嘲笑して楽しんでいたようでした。
 アメリカでは、工業関係のショーでも艶やかな女性モデル、手品師、パントマイム、コメディアンなどをしばしば使います。参観者はブースの会社や製品を覚えるよりも演技を見て行くだけで、概して効果は薄いそうです。

 5)マルチメディア

 大型スクリーン、立体音響など、展示方法もマルチメディア化して、多彩になってきました。人目は引きますが、実製品と説明板と説明員による従来の方法に比べて、製品を買ってもらうのにどれだけ効果があるか、評価は未確定です。
 ISA/95では、特殊ビューアーを頭にかけて見るバーチャル表示をJohnson-横河で使っていました。たくさんの参観者が新奇さに引かれているようでした。私は時間がなくて見ることができませんでした。ISA/95からの帰りの飛行機内で、Drexell-brook社の広報担当者が「展示方法ではJohnson-横河のバーチャル表示が一番新しく、感心した。来年はうちでも使うようにする」と、新奇アイデアを得て、興奮気味に話しかけてきました。外にも真似る会社が出るでしょう。「ビューアーの台数と1回見るのに必要な時間とから、会期中に取り扱える参観者がどれくらいになるか、あるいは参観者が辛抱して終わりまで見てくれるかなど、効果を考えましたか」と尋ねてみました。どのような計算をしたのか知りませんが、しばらくして「自分の会社には向きません」と言っていました。
前出のVTR使用も、その旨明示しておけば、1つの有効な展示方法と思います。

 6)資料の配布

 このところショーで技術資料を要求すると、あとで送付してくれる会社が増えました。重い資料を持ち歩く苦労が少なくなりました。今年は、膨大な情報が印刷物でなく、ディスケットやCD-ROMで送られて来る例が急増しました。これは1つには、メーカーにとってCD-ROMの製作が安価になったためです。また、受け取る側でPCはじめマルチメディアの普及がこの1年も引き続き急進したからです。
 しかし、ユーザーに便利で、しかもメーカーにとって販売効果が出るように、使い方の工夫をして行く余地があります。


     
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