工業計測の現状と動向  第8回

圧力測定(その2)


松山 裕
松山技術コンサルタント事務所 所長


3.差圧伝送器

 差圧伝送器は、2つの圧力の差をDC4~20mAの統一電流信号または0.2~1.0kgf/cm2の空気圧信号に変換し、遠方の表示計器や調節計に送ります。前者を電子式、後者を空気式と言います。
 差圧伝送器のおよそ50%は、差圧式流量計に使用されています。そのため、差圧伝送器には、圧力伝送器にはない機能が必要です。
 差圧式流量測定においては、オリフィスなどの絞り機構や3岐弁(スリーバルブとも言う)と差圧伝送器を組み合わせます。このときの構成は、一般的には図1のようになります。ここで、導圧管は、オリフィス前後の流体を差圧伝送器に導くために必要であり、3岐弁は、差圧伝送器の零点調整(差圧零のとき、差圧伝送器の出力を0%に合わせる操作)に必要です。
 しかし、このような構成では接続箇所が多く、流体の洩れを防ぐのにかなりの手間と費用が必要なこと、また導圧管内に流体が詰まるのを防ぐため、保守に手がかかることなどの欠点があります。そのため、最近3岐弁を省略できる差圧伝送器や、導圧管を使用しない差圧伝送器が開発されました。また、気体の流量を差圧式で測定するときは、通常温度・圧力補正が必要です。この温度・圧力補正機能を内蔵した差圧伝送器も最近開発されています。以下、これらの製品について説明します。

 (1)3岐弁を省略できる差圧伝送器

 差圧伝送器では、高圧側・低圧側の両側に圧力ががかります。もし、差圧伝送器の使用開始時などに、片側だけに圧力がかかると、これは測定範囲に比べて異常に大きい差圧に相当するので、出力は振り切ってしまいます。そればかりではなく、圧力が除かれたのちも、伝送器の零点はシフトします。しかし、3岐弁の中央の弁を開いておけば、流体の圧力は両側にかかるので、そのようなことは起こりません。
 一方差圧伝送器は、上記のようなことがなくても使用開始後時間がたつと、零点がシフトします(これをドリフトと言います)。このようなわけで、差圧伝送器は、ときどき零点調整をすることが必要であり、そのため3岐弁は差圧伝送器にとって不可欠なものと考えられていました。しかし、片側圧力負荷のときの零点シフトや、長時間のドリフトが起きない差圧伝送器ならば、3岐弁を使用しなくてもよいはずです。
 1991年末に発売されたシリコン単結晶を使用した振動式差圧伝送器は、上記の零点シフトや長時間ドリフトが非常に小さく、3岐弁の使用を必ずしも必要としません。すでに本格的なプラントでも3岐弁レスで使用されている所があると報告されています2)。この振動式差圧伝送器の原理・構造を以下に説明します。
 前号で説明したように、差圧(または圧力)を受けるダイアフラムには歪みが発生します。もし、このダイアフラムの上に微少な振動子を設置すると、この振動子の周波数は歪みに対応して変化します。この変化量はダイアフラムの歪みすなわちダイアフラムにかかる差圧にほぼ比例しますので、これを測定すれば差圧信号が得られます。実際の製品では、IC用半導体プロセス技術を応用して約7

     

































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