mm角の単結晶シリコンを加工し、ダイアフラムの表面に2個の振動子を作り込みます(図2)。この振動子はH字状で、Hの一脚の長さは500μm、幅20μm、厚さ5μmです。2個の振動子は、ダイアフラム上で各々引張力と圧縮力が発生する位置に配置されていますので、ダイアフラムに圧力がかかるときの周波数の変化は逆方向になります。したがって、この周波数の差をとって差圧信号とします。また、和をとって圧力信号を得ることもできます。なお、この振動子は、真空室の内部に納められています。この差圧伝送器は、横河電機によって開発されました。

 (2)導圧管を使用しない差圧伝送器

 昨年秋の国際計測工業展において、導圧管レスの差圧伝送器が横河電機と山武ハネウエルの小間に展示されました。これらは、1 1/2B(40A)のダイアフラムシールを使用した差圧伝送器<注>で、ダイアフラムをプロセス配管のすぐ近くに設置し、導圧管を使用しない方式です。これにはプロセス配管から1/2Bのフランジを出し、これにアダプターを介して1 1/2Bのダイアフラムシールを取り付ける方式と、プロセス配管から1/2Bのタップを出し、これにダイアフラムシールブロックを接続する方式の2つがあります。図3に後者の構成例を示します。このダイアフラムシールブロックには2個のダイアフラムシールが一体となっています。また、差圧伝送器とダイアフラムシールブロック間の2本のキャピラリーは、合体して1本になっています。ダイアフラムシールとキャピラリーチューブ内のシール液の体積は、周囲温度によって変化しますが、上記の構造はこの影響を軽減するための工夫です。

 (3)温度・圧力補正機能付差圧伝送器

 約5年前、山武ハネウエルが温度・圧力補正付差圧伝送器を発売しました。これは、5mm角のシリコンの差圧検出ダイアフラム上に歪みゲージを形成したセンサを使用した製品で、原理的には前号で説明した歪みゲージ式半導体圧力センサと同じです。違うのは、シリコンチップ上に静圧センサも形成されている点です。この静圧センサを利用して圧力補正を、配管に取り付けた温度センサからの入力を利用して温度補正を行います。これを温度・圧力補正を行う差圧式流量計に使用すると、必要な機器が少なくてすみ、費用が安くなるメリットがあります。
 一方、昨年の国際計測工業展においては、日立製作所とフィッシャー・ローズマウント・ジャパンより同じコンセプトの製品が出品されました。日立製作所の製品では、5.7mm角のシリコンチップの上に差圧センサ、静圧センサ、温度センサが形成されています。差圧センサと静圧センサは受圧ダイアフラムが独立になっており、出力間の相互干渉はないと説明されています。また、静圧センサは片側が封止されており、絶対圧センサとなっています。なお、シリコンチップ上の温度センサは、差圧センサの特性を補償するもので、流量信号の温度補正用の信号は外部温度センサから得ます。


◆参考・引用文献 ◆

1 )松山 裕:実用流量測定、p.18、省エネルギーセンター(1995)
2 )岩橋英夫・鈴木一宇:淡水化プラントにおける差圧伝送器のスリーバルブレス化、計装別冊(最新プロセスセンサの使い方)、p.94~97(1995)
3 )鈴木一宇・谷藤精司:シリコンレゾナントセンサを採用したインテリジェント差圧伝送器、自動化技術、Vol.24 、No.2、 p.67(1989)
4 )横河電機資料、導圧管レスダイアフラムシール付差圧伝送器

<注>流体の圧力をいったんダイアフラムで受け、シール液を充填したキャピラリーチューブを介して差圧伝送器に圧力を送る方式。リモートシール式とも言う。


      著者紹介



松山 裕
松山技術コンサルタント事務所
所長









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