波の間の電磁波です。このため、このレベル計を電波式レベル計とも言います。
 原理的には超音波式レベル計と同じですが、波としての伝播速度は桁違いです。超音波はおよそ330m/sなのに対し、マイクロ波は約30万km/s(3×108m/s)です。マイクロ波が送信され、測定面で反射されて戻るまでの時間を考えると、これは送受信器から測定面までの距離(L)を2倍し、マイクロ波の速度で割った時間になります。もし、Lを3mとすると、この時間は20ナノ秒(2×10-8秒)となり、0.1%の分解能が必要とすると、必要な時間計測の分解能は20ピコ秒(2×10-11秒)となります。このような高精度の時間測定には特殊な手法が必要となります。
 従来使用されていた手法はFMCW(周波数変調連続波)法です。これは、時間とともにマイクロ波の送信周波数をスイープさせ(たとえば9.5ギガヘルツ<注2>から10.5ギガヘルツまで)、測定面からの反射波による受信周波数と、その時点での送信周波数を比較する方法です。送信周波数は一定速度で変化するので、反射波の周波数は、マイクロ波を送信してから受信するまでの時間に比例して変わります。したがって、この両者の差が測定面までの距離に比例します。この方法は、非常に高精度のレベル測定が可能ですが、やや応答が遅いと言われています。
 日本では、スウェーデンのサーブの製品をトキメックが、ドイツのクローネの製品を東京計装が販売しています。なお、アメリカのフィッシャー・ローズマウントも昨年末、製品を発表しました。
 一方、最近開発された方法に、パルス波時間法2)があります。前述のように、マイクロ波の伝播速度は非常に速いので、反射波をすべて受信し、演算処理するのは大変です。そのため、受信波のごく一部だけをサンプリングし、かつそのサンプリングする部分を一定時間ごとにシフトして行き、それらを合成して加工した波を作ります(図2参照)。加工された波は、元の波と同じ波形で、しかもゆっくりした波となるので、これを使用して測定面までの距離を求めます。これはドイツのエンドレス・ハウザーの製品で、日本では桜エンドレスが販売しています。同社では、この方式の方が応答が速く、かつ価格も比較的安いと主張しています。なお、同原理のドイツのベガの製品を、松島機械研究所が扱っています。
 マイクロ波の送受信には、アンテナが必要です。これには、金属製のコーン型アンテナかパラボラ型アンテナが使用されます。しかし、これらは容器への取付けにあたって、ややスペースを必要とするため、最近、テフロンの棒を使用したアンテナが出現しました。これだと、取付に要するスペースが少なくてすみます。
 マイクロ波式のレベル計の特長としては、高温・高圧の環境下や真空タンクでの測定が可能であることおよび超音波式より精度が高いことがあげられます。また、マイクロ波は、ガラス、セラミック、テフロン、ポリプロピレンなどを透過するので、容器にこれらの材質でできた窓を取り付けるか、容器そのものが非金属でできているときは、検出器を容器の外側に設置することができます。そのため、従来放射線式でしか可能でなかった応用例の一部が、マイクロ波式で可能になると考えられます。


◆引用文献 ◆

1 )牛窪 肖:非接触型レベル計使用上の注意点、計装別冊(新・プロセスセンサの使い方)、p.99 (1989)
2 )谷 多久二:マイクロ派レベル計の適用視点、計装別冊(最新プロセスセンサの使い方)、p.133~136 (1995)


<注1>電波は、300万メガヘルツ(3×1012ヘルツ)以下の周波数をもつ電磁波と定義されています。
<注2>ギガヘルツは109ヘルツ


      著者紹介



松山 裕
松山技術コンサルタント事務所
所長


















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