工業計測の現状と動向  第13回

気体成分測定(その1)


松山 裕
松山技術コンサルタント事務所 所長


  1.気体成分測定法の動向

 第二次世界大戦直後は、国産のガス分析計としては熱伝導率式くらいであり、あとは海外からの輸入品が若干使用されていた程度でした。昭和30年代に入ると、赤外線分析計、磁気式酸素計、ガスクロマトグラフなどが発表されました。ジルコニア式酸素計の登場は、これらよりかなりおそく、製品として普及したのは昭和50年代に入ってからでした。
 表1に、主な気体成分測定法と、主な測定対象を示します。このうち、分析計として生産額が大きいものは、赤外線式、ガスクロマトグラフとジルコニア式酸素計です。今回は、酸素計について説明し、他の測定法は次回に説明します。

  2.酸素計

  (1)概要

 工業用酸素計の用途としては燃焼制御用がもっとも重要で、燃焼排ガスの酸素濃度測定用に広く使用されています。この目的には、以前は磁気式が使用されていましたが、現在はジルコニア式が主に使用されています。次に重要なのは、各種装置や工業炉内の雰囲気中および高純度ガス中の酸素濃度の測定であり、これにはppbレベルの極低濃度の測定が要求されることもあります。この目的にはジルコニア式かガルバニ電池式が主に使用されています。また酸欠防止用にもガルバニ電池式が使用されていますが、構造は極低濃度用とは若干異なります。なお上記以外の酸素計に、蛍光式酸素計などがあります。

  (2)ジルコニア式

 酸化ジルコニウムに一定比率の酸化イットリウムを加えて焼結したジルコニア磁器は、550~1100℃の高温において酸素イオンに対し導電性があります。すなわちこれに酸素を含む気体を接触させると、酸素原子はイオンになって磁器の中に侵入します。磁器の両側に、酸素分圧の異なる気体が接触すると、これらの分圧の比の対数に比例した起電力を生じます(図1)。この起電力を直流mVで表すと、およそ0.05T・log(P1/P2)となります(Tはジルコニア磁器の温度で、絶対温度で表す)。
 通常、一方の気体に空気を使用しますので、図のP1は一定です。したがって起電力Eより、測定ガスの酸素濃度を求めることができます。
 ジルコニア式酸素計は、プロセス配管や煙道中に直接挿入して使用します。そのため、他の酸素計と異なりサンプリング装置は不要であり、また応答も速いので燃焼制御用に適しています。
 一方、この酸素計の起電力は対数特性ですので、測定ガスの酸素分圧P2が0%に近づくと急激に増大します。そのため100ppm以下の低濃度用には使用が困難です。また、測定ガス中に可燃性ガス(CO、H2など)があると、これがジルコニア磁器上にて燃焼し、その分酸素濃度が減少して誤差を生じます。
 ここまでに説明したジルコニア式酸素計は濃淡電池式といいますが、それ以外に限界電流式という酸素計があります。
 図1において、ジルコニア磁器の両側の電極に電圧を加えますと、酸素イオンO2-はマイナス側の電極から入ってジルコニア磁器内を移動し、プラス側の電極にきて電子を放出し、再び酸素分子となります。これはいわば酸素をポンプで送っていることと同じなので、

     




























次ページへ>

*. 本ウェブサイト上に掲載されている情報は、掲載した時点での情報です。記載内容はお断りなしに変更することがありますのでご了承ください。

*. 本ウェブサイト上の表示価格には消費税は含まれておりません。ご注文の際には消費税を別途頂戴いたします。

MG 株式会社エムジー

Copyright © 1992 MG Co., Ltd. All rights reserved.