ループによるpH制御が困難になります。
また、pH制御における一般的な問題点として、pH値の中和点(pH=7)近傍において、プロセスの感度(ゲイン)<注1>が急激に高くなるという現象があり(図3参照)、プロセス液のpH値変動が大きいプロセスにおける中和制御では、対応策が必要な場合もあります。
 図4および図5は、本例においてサンプル値PI制御を実現するスーパーDCSのシステム構成、およびソフトウェア構成を示します。
 本構成による特長は、単にサンプル値 PI制御の機能を実現するだけでなく、調節計に非線形ゲイン(可変ゲイン)特性を持たせることによって、pH値の中和点近傍におけるプロセス感度の変化を補償し、プロセス液のpH値の大幅な変動に対しても、安定した制御を可能にしている点です。
 以下に、主なソフトウェア機能の働きを示します。
 (1)拡張形PIDブロック
 制御出力のホールドスイッチを持ち、これをONとすることで制御演算が止まり、出力がホールドされます。このスイッチをサンプリング周期毎に一定時間OFFとすることで、出力が更新され、サンプル値制御動作が実現されます。
 また、入力補償端子に非線形演算ブロックが接続され、制御偏差に対する非線形ゲイン特性を持ちます。
 (2)非線形演算ブロック
 折れ線近似による非線形演算を行います。プロセス感度の変化の特性に応じて、折れ点および傾きを設定します。
 (3)タイマブロックとシーケンサブロック
 サンプル値制御におけるサンプリング周期T、および制御時間τのタイミング信号を発生し、その信号に従って制御ブロックのホールドスイッチをON/OFFします。

おわりに

 サンプル値制御は簡単な原理でありながら、むだ時間要素が支配的で、連続制御が困難なプロセスに対しては大変効果的な制御方式であり、本例以外にも多くの応用分野が考えられます。また、センサ自体がサンプリング方式であり、間歇的な測定値しか得られない場合<注2> などにも適用できる制御方式です。


◆ 参考文献 ◆

オーム社「計装システムの基礎と応用」
千本 資、花淵 太 共編
(著者は執筆者の一員)

     

<注1>中和剤の注入量に対するプロセス液のpH値変化の比率。









<注2>たとえばプロセス用ガスクロマトグラフによる成分測定が挙げられます。
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