工業計測の現状と動向  最終回

フィールドバス


松山 裕
まつやま ゆたか
松山技術コンサルタント事務所 所長


     1.フィールドバスとは

 この連載も今回が最後となりましたが、ここで今後の工業計測・制御技術に大きな影響を及ぼすと考えられる、フィールドバスの現状と動向について簡単な説明をしたいと思います。
 フィールドバスについては、今まで多くの解説記事やレポートが、雑誌などに発表されています。またかつて『エムエスツデー』誌上にも、鳥取輝美氏の解説が連載されていました。しかし、これらはほぼすべてフィールドバス協会(Fieldbus Foundation)のフィールドバス(以下FFバスと略称)についてのものであり、他のフィールドバスについての説明はほとんどありませんでした。本稿では、現在市場にあるフィールドバスについて、オーバービュー的な解説を試みたいと思います。
 まず、“フィールドバスとは”ということですが、ISA(アメリカの国際計測制御学会)の定義では、「フィールドバスは、インテリジェント・フィールド機器と制御システム機器間の、従来の4~20mA標準に代わる、ディジタル双方向通信路である」とされています。すなわち、現在現場にある伝送器や操作端と、中央計器室にある調節計・記録計などは、4~20mAの直流信号によって結ばれているわけですが、これをディジタル信号回線におきかえようとするものです。
 現在発表されているフィールドバスおよびこれに準ずるバス(広義のフィールドバス)はおよそ50種類に達しています。これらを分類すると、表1に示す3種類に分けられます。ここに示したデバイスバス・センサーバスは、主としてPLCと結合するバスであり、比較的小規模のシステムを構築するのに用いられています。これらは扱う情報量は少ないが、通信プロトコルを実現する半導体チップが安く入手できるものが多く、FA(ファクトリーオートメーション)分野では普及しています。ただし本稿ではこれ以上の説明は省略します。

2.フィールドバス開発の現在に至るまでの経過

 前述の定義によるフィールドバスの開発を最初にスタートさせたのはISAであり、担当委員会SP50が作業を開始したのは1984年でした。翌1985年には、IEC(国際電気標準会議)のTC65委員会にて標準化作業がSP50と共同で開始されました。一方フランス・イタリーの複数の企業が作ったFIPグループ(現在はWorldFIP)とドイツシーメンスを中核としたProfibusグループは1986~87年に作業を開始し、それらのバスは1990年にはそれぞれフランス・ドイツの国家規格になりました。また、これより先デンマークでもP-NETというフィールドバスが開発され、現在デンマーク規格になっています。
 以上のようにヨーロッパでの規格作りは早かったのですが、内容的にはFA向けが主体であり、PA(プロセスオートメーション)用には必ずしも適合していませんでした。
 一方IEC/SP50の規格案作りは難行しました。通信回線の仕様に関する国際的なモデルにOSI参照モデルというものがあります。これは仕様を7グループに分けていますが、フィールドバスではそのうちの第1・第2・第7をきめることになっています。またIEC/SP50では、これに第8グループを追加することにしています。OSI参照モデルでは、グループといわずレイヤー(層)といっていますが、フィールドバスできめることになっている各層の名前と役割を表2に示します。しかし、IEC/SP50では、7年かかってやっと第1層しかきめられませんでした。そのため大手計器メーカーが製品化の促

     













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