自動制御入門  第1回

フィードバック制御とフィードフォワード制御


松山 裕
まつやま ゆたか
松山技術コンサルタント事務所 所長


     はじめに

 自動制御は、産業に必要な基礎技術の一つです。戦後の日本の工業の発展は、自動制御技術に支えられたといっても過言ではないと思います。
 しかし、自動制御技術は難解であるという印象が世間には強く、多くの人達に敬遠されているように思われます。これは誠に残念なことです。
 たしかに、数式だらけの自動制御の本を読むのは大変です。しかし、そのような本を読まなくても、自動制御の考え方を理解することによって、調節計や制御装置を操作して対象プロセスをうまく制御することは可能です。
 この連載では、調節計を使って自動制御を行うために必要な知識を、数式を使わずに説明して行きたいと思います。もし、本連載の内容についてご質問なり、ご意見があれば、気軽にFAXにてご連絡ください。

1.自動制御とは

  「制御」は、JISによると「ある目的に適合するように、対象となっているものに所要の操作を加えること」となっています(1)。また、この操作を直接または間接に人が行うのが手動制御、制御装置によって自動的に行われるのが自動制御であるとしています。
  「自動制御の対象になっているもの」を大別すると、ほぼ下記のようになります。
 (1)自動車・航空機・船舶・ロボットのような移動物体
 (2)順序を追って動作させることが必要な機械装置
 (3)化学工場・製鉄所・発電所などの装置工業や、上水道・下水道などの処理設備
 (4)エアコン・電気炊飯器・電気コタツなどの家電製品
 しかし、制御の目的や操作という見地からは、上記の各グループにはかなりの差があり、したがって自動制御の内容もかなり違います。
 まず(1)では、移動物体の位置・姿勢・方向・移動速度などを、人間が設定した値に忠実に従わせることが主な目的となっています。このような制御をサーボメカニズムといいます。サーボは、ラテン語で奴隷を表す言葉から作られました。
 (2)では、いわゆるシーケンス制御が中心となります。これは次の(3)で主に使われているフィードバック制御とは異質のものです。
 (3)の装置工業や処理設備では、これらの装置や設備における温度・圧力・流量・成分などの各変数を、所定の値に保つことに重点が置かれます。所定の値に保つといっても一定値とは限りません。タイムスケジュールによって制御目標値を変えるプログラム制御や、他の変数と関連づけた制御を行う比率制御やカスケード制御もあります。これらの制御は、一般にプロセス制御といいます。プロセス制御では、次章で説明するフィードバック制御が主体ですが、一部フィードフォワード制御も使用されます。またある時間ごとに1回の操業が終わるバッチプロセスでは、シーケンス制御も使用されます。(4)の家電製品に適用される制御技術も、基本的にはプロセス制御と同じです。
 本連載では、対象をプロセス制御に絞って説明を行います。

2.フィードバック制御とフィードフォワード制御

 2.1 フィードバック制御とブロック線図
 図2.1に温水加熱装置の例を示します。この装置では、タンクに取り付けられた温度検出器によってタンク内の水の温度が測定され、これが温度調節計に伝えられます。温度調節計は、オペレータによって設定された目標値と温度測定値とを比較し、この両者の差(偏差と


     












































































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