スーパーDCSによる フィードフォワード制御

(株)エム・システム技研 開発部 主席技師

はじめに

 本誌昨年12月号と本年1月号にて、フィードバック制御における難しい課題-長いむだ時間要素を含むプロセスの制御-の解決方法をいくつかご紹介いたしました。
 しかし、フィードバック制御では、原理的に目標値と制御量に偏差が生じない限り制御動作を行わないため、外乱の影響を完全に取り去ることができません。とくに、変動周期がプロセスのむだ時間要素よりも短い外乱に対しては、フィードバック制御による抑制効果は期待できません。
 一方、もし、外乱を測定でき、かつ、その影響度を予測することが可能であれば、外乱に対応する操作を先行させることによって影響を未然に防ぐことが可能です。フィードフォワード制御は、このような考え方に基づく制御方式です。

1.フィードフォワード制御の原理

 フィードフォワード制御の原理を、図1に示す熱交換器を例にとって説明します。図1において、いま 、T1が目標温度Trに一致し、系の平衡状態が保たれているとします。ここで、外乱としてQ1が減少した場合、T1は目標値から外れ、次の平衡状態へと遷移します。
 しかし、もしQ1を測定し、その変化(外乱)に見合った分だけQ2を減少させる操作を行えば、T1に変動をもたらすことを防止できます。このような動作がフィードフォワード制御の原理であり、外乱の測定信号を、対応する操作量に変換するための演算内容が制御アルゴリズムになります。
 演算内容は、通常、ゲイン項と、進み遅れ演算などの動特性要素の組み合わせにより構成されます。また、フィードフォワード制御では、演算のパラメータがプロセスの特性と一致していない場合に制御偏差を生じるため、フィードバック制御と組み合わせて用いられるのが一般的です。

2.スーパーDCSによるフィードフォワード 制御の例
-フリーネス制御 -


 スーパーDCSによるフィードフォワード制御の例として、紙・パルプ工業におけるフリーネス<注1>制御について、概要を紹介します(図2参照)。
 図2において、フリーネス制御ループが叩解機<注2>出口におけるパルプ液のフリーネス値を一定に保つために、叩解機の負荷電力制御ループの設定値を操作しています(叩解機の負荷電力とフリーネス値は反比例します)。ここで、フリーネス値の検出にはフリーネス計が用いられますが、この測定器はサンプリング測定方式であるため、フィードバック制御ループを構成する場合、系に長いむだ時間要素が含まれることになります。そのため、本ループにはサンプル値 PI 制御を適用しています。
 上記のループにおいて、叩解機を通過するパルプ液の流量変動が制御系に対する主外乱となり、とくに短周期変動や突発的な変動に対してはサンプル値PI制御による外乱抑制効果は期待できません。

     



























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