一方、フリーネス値をパラメータとしたとき、叩解機を通過するパルプ繊維の量(パルプ液の流量)と負荷電力の間には、ほぼ直線的な正の相関があります(図3参照)。
 そこで、この相関を利用して、パルプ液の流量測定値に基づき、叩解機の負荷電力に対してフィードフォワード制御を行います。サンプル値PI制御にフィードフォワード制御を追加することによって、パルプ液の流量変動に対しても、フリーネス値を安定に維持することが可能になります。
 図4および図5は、本例においてサンプル値 PI 制御を実現するスーパーDCSのシステム構成、およびソフトウェア構成です。
 以下に、主なソフトウェア機能の働きを説明します。
(1)拡張形PIDブロック
 フリーネス制御ループ用として、サンプル値PI制御の調節動作を行います。制御周期は、フリーネス計のサンプリング周期に同期がとられます。また、出力補償機能および外部帰還機能を利用し、フィードフォワード制御の入/切および下位の電力調節ループ(PIDブロック)のカスケード/ローカルモード切り換え時に出力をバンプレス化します。
(2)折れ線リニアライザブロック
 図3における、パルプ繊維の量と負荷電力の相関を折れ線で近似し、フィードフォワード制御信号として出力します。
(3)パラメータ設定ブロック
 サンプル値PI制御ループにおけるフリーネスの設定値が変更された場合、上記の折れ線リニアライザブロックのパラメータを自動的に変更します。
(4)入力選択/偏差警報ブロック
 フリーネス計の測定信号(サンプル値)が前回のサンプル値に比較して異常に大きく変化した場合、出力を更新せずに前回のサンプル値を保持します。

おわりに

 フィードフォワード制御は、外乱に対する効果的な制御手段として多くのプロセスで実際に使われています。近年は、スーパーDCSに代表されるような、高度な演算・制御機能を安価に実現できる新しいDCSが登場してきたこと、また、流量、圧力など外乱となる変数を測定するセンサが低価格化してきたことが相まって、フィードフォワード制御が導入される機会も今後一層増加していくものと考えられます。

◆ 参考文献 ◆
金原出版(株)「紙パルプ辞典」 
紙パルプ技術協会 編

<注1>フリーネス(ろ水度):パルプの水切れの程度を示す数値。叩解機による叩解の程度の指標となる。
<注2>叩解機:パルプ液中の繊維を機械的に処理し、切断、枝状化する装置。回転刃と固定刃の隙間にパルプ液を通過させる。 


     










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