このままでは定量化できないので、測定値の変化速度が一番大きい所に接線を引きます。この接線と、最初の測定値θ0、最終的な測定値θ1に対応する横軸と交わる点A・Bを求めます。これより図4.2に示すようにLとTを得ます。このLを等価むだ時間、Tを等価時定数といい、プロセスの特性を代表する数値とします。この等価むだ時間・等価時定数の意味を以下に説明します。
 一般の制御プロセスには、あちこちに時間的な遅れがあります。前に示した温水加熱装置の例でいうと、調節弁・水のタンク・温度検出部などすべて信号の遅れの原因となります。これらはおおむね一次遅れの特性をもっています。一次遅れ特性というのは図4.3に示す特性で、電気回路でいえばCR回路に見られる特性です。しかし、複数の一次遅れ特性の要素が直列につながっていると、特性がだんだん崩れてきて、図4.2のような特性になります。また純粋なむだ時間特性をもつ要素も制御システムに入っているかもしれません。純粋なむだ時間特性というのは、プロセスに何らかの信号を与えても、そのときから一定時間は何の変化もなく、その時間がすぎたら突然変化が現れる特性です。たとえば図4.4のようなプロセスでは、薬液を添加してから濃度調節計に指示が出るまでには、距離lを流速υで割っただけの時間がかかります。これは純粋のむだ時間特性であり、このようなプロセスを単なるPID制御で制御することは困難です。
 それはとにかく、純粋なむだ時間をもつ要素があると、図4.2のLはその分だけ多くなります。すなわちLは、複数の一次遅れによる見かけ上のむだ時間と純粋のむだ時間の合計なのです。純粋な一次遅れ特性と純粋なむだ時間特性をもつプロセスに対し、階段状の調節弁開度変化を与えると、測定値は図4.5の変化をします。すなわち、図4.2に見られたような実際の測定値変化を、図4.5の形に近似するのが前記の数値化の方法なのです。このやり方はかなりおおざっぱなものですが、もっと詳しくやっても手間がかかる割合にさほど効果が上がらないので、一般にこの方法が使用されています。
 なお、図4.2のY/Xは、調節弁開度変化量に対する測定値の変化の割合ですので、プロセスゲインといいます。たとえば調節弁開度が10%変化したとき、測定値が20%変化したとすれば、プロセスゲインは2です。なお、ここで測定値は調節計の測定スパンに対する%で表現します。

◆ 参考文献 ◆
松山 裕:だれでもわかる自動制御、省エネルギーセンター(1992)


      著者紹介



松山 裕


松山技術コンサルタント事務所
所長








<前ページへ次ページへ>

*. 本ウェブサイト上に掲載されている情報は、掲載した時点での情報です。記載内容はお断りなしに変更することがありますのでご了承ください。

*. 本ウェブサイト上の表示価格には消費税は含まれておりません。ご注文の際には消費税を別途頂戴いたします。

MG 株式会社エムジー

Copyright © 1992 MG Co., Ltd. All rights reserved.