計装豆知識

DCSの歴史

DCS以前の状況

 アナログ計装が全盛となった1960~70年代に、計装用コンピュータが現れ、プロセスコンピュータとか制御用ミニコンと言われていました。
 制御用コンピュータでは、リアルタイムオペレーティングシステムと呼ばれるソフトが必要です。従来の事務用コンピュータのオペレーティングシステムでは、入力されたデータは時間をかけて処理し、オペレータがコーヒーを飲んでいる間に結果が出ればよいというのが常識でしたが、制御用ミニコンはそれと異なり、入力された信号(PV値)を用いて即座に計算し、(MV値として)出力する必要があります。
 リアルタイムOSでは、マルチタスク処理と呼ばれる演算処理が行われます。これは、同時に処理しているような形で複数の処理が行われるものであり、複数のコンピュータがあるように見えます。
 制御用ミニコンを使用してアナログ計装なみのシステムを組み上げるためには、膨大なソフトウェア工数がかかりました。このソフトは、ほかのシステムとは共用できず、最初からすべてを組み上げなければなりませんでした。また、システムに高信頼性が求められるため、デュアルシステムやデュープレックスシステムなどの方法がとられ、システムが巨大化しました。システムが巨大化すると、それに対するソフトも巨大になり、デバッグ(虫つぶし)が大変になってきます。ソフトによっては、100年に1回しか動かないソフトなども含まれ、全ソフトはチェックしきれない状況にもなってきました。
 ユーザーからはシステム完成までの工期短縮と低コストの要求があり、またメーカーにとっても(この頃のメーカーのコンピュータ部門は、各社ともほとんどが赤字状態であったため)工数削減の要求が大きく、それにこたえるものとしてDCS<注>と呼ばれるシステムが開発されました。

DCSの出現

 DCSでは、制御用CPUと監視用CPUが分かれているため、それぞれ別途に機能を作り込んでおけるようになりました。また、制御用CPUも分散して40~80ループのグループに分割されました。そして、各ソフトモジュールがファームウェア化されるようになり、ジョブごとにソフトウェアを作らなくてよくなりました。このようにして信頼性が高められ、ユーザーにとってもメーカーにとっても都合のよい状況が得られました。
 しかし、DCSの巨大化が進むのに伴い、従来ユーザーが分担したアプリケーション部分の処理も膨大になり、メーカーに頼る傾向が現れています。

簡易計装の時代(現在)

 大形のDCSは、石油産業で代表される大規模のプロセス工業ではかかせないものであり、今後も継続して使用されると考えられます。一方、そこから出荷される中間製品を加工する工場などでは、大形DCSではコストがかかりすぎるため、さらに簡易な計装への要求がでてきました。
 CPUが高価なときには、1CPUで扱うループ数もある程度以下には小さくできず、現在の大形DCSの主流である数十ループ単位が普通でした。IC技術が発達し、集積度が増してCPUのコストが大幅に低下するのに伴って、小形化が容易になりました。その結果、1CPUで1ループを扱うことさえ可能になりました。しかも、各機器をユニット化し、通信機能を設けて機器間でデータをやり取りすることによって、簡易計装でも大形DCSに匹敵する機能を実現することができます。


<注>DCS(Distributed Control System):分散形制御システム
1台のコンピュータでプラント全体を制御するのでなく、いくつかの制御ループごとに制御コンピュータをそれぞれ分散配置することによって、コンピュータの故障に起因する全プラントの同時シャットダウンの危険を防止したプロセス制御システム。

     
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