1960年代、当時の大型コンピュータを使用してプロセスを直接制御しようとする試みが、各地で行われました。これをDDC(direct digital control)といいます。当時はコンピュータが高価であったため、1台のコンピュータで数十から数百のループの制御を行っていました。しかしこの方式は、コンピュータの故障が発生したときの打撃が大きいこと、価格的に高価であることが理由で普及しませんでした。しかし前述のようにマイクロプロセッサの開発に伴い、これを中核とした制御システムが開発されました。
この場合は、1台のマイクロプロセッサが担当するループ数が比較的少ないので、プロセッサが故障したときの危険が少ない(危険分散)という意味で分散形制御システム(Distributed Control System、略してDCS)といわれました。このシステムでは、制御機能を担当するユニット(調節計の本体に相当)、運転・監視を担当するユニット(調節計の前面部分に相当)、外部との通信を担当するユニットなど機能別にユニットが分離していて、全体をローカルの通信バスで結んでいます。したがってこの場合は機能分散といえます。この製品は、応用が進むにつれて、CRTを使用したプロセスの運転・監視方式に多くのメリットが認識されるようになり、機能分散の側面が重視されるようになりました。
このシステムでは、調節計はコンピュータによりソフトウェアで作り込まれているので、新設・改造・配線換えは自由自在です。また複数の調節計や指示計をまとめた画面(いわば操作パネル)を作り運転・監視に利用しますが、この画面を任意に作ることができます。なお、1台のマイクロプロセッサが担当するのは比較的少数のループであるといっても、万一故障すると影響が大きいので、2重化などによる信頼性の向上に力を入れています。しかしこれは一面価格の上昇を招いています。
最近はパソコンや通信技術の発展に伴い、多数の1ループ型の調節計とパソコンを通信バスでつなぎ、全体として上記の分散形制御システムに相当する機能をもたせようとするシステムが増加しています。信頼性や使い勝手の点では議論はありますが、価格面や設置スペースなどでメリットがあり、徐々に普及して行くものと思われます。