1998年1月号

 デジタル式は、アナログ式のような積分時間・微分時間の間の干渉はありません。また多くの高級な演算が容易に行えます。前に述べたオートチューニングも、デジタル式になってはじめて可能となった機能です。
 デジタル式調節計の一種に直入力温度調節計があります。これは内容的には、たとえば図9.2に示された製品とほとんど同じです。しかしこのタイプでは、直接熱電対や測温抵抗体を入力端子に接続できます。また温度制御固有の制御機能や出力機能をもっています。価格も安く、かつての可動コイル式のあとを継ぎ、広く使用されています。

 9.4 分散形制御システム

 1960年代、当時の大型コンピュータを使用してプロセスを直接制御しようとする試みが、各地で行われました。これをDDC(direct digital control)といいます。当時はコンピュータが高価であったため、1台のコンピュータで数十から数百のループの制御を行っていました。しかしこの方式は、コンピュータの故障が発生したときの打撃が大きいこと、価格的に高価であることが理由で普及しませんでした。しかし前述のようにマイクロプロセッサの開発に伴い、これを中核とした制御システムが開発されました。
 この場合は、1台のマイクロプロセッサが担当するループ数が比較的少ないので、プロセッサが故障したときの危険が少ない(危険分散)という意味で分散形制御システム(Distributed Control System、略してDCS)といわれました。このシステムでは、制御機能を担当するユニット(調節計の本体に相当)、運転・監視を担当するユニット(調節計の前面部分に相当)、外部との通信を担当するユニットなど機能別にユニットが分離していて、全体をローカルの通信バスで結んでいます。したがってこの場合は機能分散といえます。この製品は、応用が進むにつれて、CRTを使用したプロセスの運転・監視方式に多くのメリットが認識されるようになり、機能分散の側面が重視されるようになりました。
 このシステムでは、調節計はコンピュータによりソフトウェアで作り込まれているので、新設・改造・配線換えは自由自在です。また複数の調節計や指示計をまとめた画面(いわば操作パネル)を作り運転・監視に利用しますが、この画面を任意に作ることができます。なお、1台のマイクロプロセッサが担当するのは比較的少数のループであるといっても、万一故障すると影響が大きいので、2重化などによる信頼性の向上に力を入れています。しかしこれは一面価格の上昇を招いています。
 最近はパソコンや通信技術の発展に伴い、多数の1ループ型の調節計とパソコンを通信バスでつなぎ、全体として上記の分散形制御システムに相当する機能をもたせようとするシステムが増加しています。信頼性や使い勝手の点では議論はありますが、価格面や設置スペースなどでメリットがあり、徐々に普及して行くものと思われます。


◆ 参考・引用文献 ◆

1)松山 裕:だれでもわかる自動制御、省エネルギーセンター(1992)
2)エム・システム技研:ワンループコントローラ ABH仕様書

      著者紹介



松山 裕
松山技術コンサルタント事務所
所長
(FAX No.03-3971-9143)




図9.2 
デジタル調節計の構成例2)
<前ページへ次ページへ>

*. 本ウェブサイト上に掲載されている情報は、掲載した時点での情報です。記載内容はお断りなしに変更することがありますのでご了承ください。

*. 本ウェブサイト上の表示価格には消費税は含まれておりません。ご注文の際には消費税を別途頂戴いたします。

MG 株式会社エムジー

Copyright © 1992 MG Co., Ltd. All rights reserved.