1998年2月号

自動制御入門  第11回

調節計の機能(その1)


松山 裕
まつやま ゆたか
松山技術コンサルタント事務所 所長


10.調節計の機能

 10.1 調節計の基本構成と主な機能

 前月号において、アナログ調節計のPID回路例とデジタル調節計の構成例を示しました。これらの電気回路は大きく異なりますが、調節計の機能については、基本構成はまったく同じです。すなわち、調節計の制御演算部は、目標値と測定値を受けてPID演算などを行い、この結果を出力部を経由して4~20mAの直流電流として出力します。これを図10.1に示します。
 この図には、手動出力発生部と自動/手動切換え部があります。この部分は、調節計にとって絶対必要とはいえませんが、一般の調節計にはほとんど付いています。これは、運転開始時や緊急事態発生時には、オペレータが直接調節弁を操作する必要があるからです。
 調節計の機能には、制御機能、目標値設定機能、入力機能、出力機能などがあります。以下これらについて説明します。

 10.2 制御機能

 制御機能は、大別して下記に分けられます。
 I.制御動作
 II.正・逆動作
 III.自動/手動切換え操作

 (1)制御動作

 市販されている調節計は、すべてPID動作を基本としています。ファジィ制御と称している調節計でも、PID動作を基本とし、その上にファジィ推論を使ったアルゴリズムを付加しています。
 PID制御の調節計は、通常微分動作や積分動作をカットし、PI動作・PD動作またはP動作に変更できます。ただし以前説明したように、積分動作がないとオフセットを生じますので、そのときは手動リセット機能を付加できるようになっています。
 電子式調節計の多くは、PID動作のみならず各種の制御手法を使用できます。制御手法の代表的な例については、11章で説明することを予定しています。

 (2)正・逆動作

 正動作は、測定値が増加するとき調節計の出力も増加する動作をいい、逆動作はその逆です。この正動作・逆動作は、制御対象プロセスや調節弁の特性により選択する必要があります。一般の調節計では、正動作・逆動作の切換えは容易に行えるようになっています。

 (3)自動/手動切換え操作

 プロセスの運転開始時には、通常オペレータは手動で運転を開始し、プロセスの状態が安定してから自動運転に切換えます。また、プロセスの自動運転中何らかの異常を検知したときは、手動運転に切換えることが一般的です。自動状態と手動状態では、調節計の出力は同一ではありませんが、現在の調節計は自動→手動、手動→自動の両方の切換え時に、切換え直前の出力値を引き継いで自動的に切換わるようにできています。以前は、手動・自動の両出力の合せ込みを人間が行う必要があり、これをバランス操作といっていました。したがって今のやり方はバランスレス切換といっています。
 しかし、手動から自動に切換えるとき、目標値と測定値の間に差があると、調節計はこの偏差に対してPID演算を行いますので、出力は引き継いだ手動出力値を起点として切換え直後から変化して行きます。切換え時の偏差の大きさによっては、これは好ましくない場合もあり得ます。これを防ぐには、目標値をその時の測定値に合わせてから切換えればよい(偏差がゼロだから出力は変化しない)のですがこれはやや面倒です。そのため、これと同じことを調節計にやらせる機能に測定値トラッキング機能というものがあり、多くの電子式調節計に採用されています。

     

















図10.1 
調節計の基本構成1)
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