1999年10月号 | |
計装豆知識イーサネット |
イーサネットの開発の背景と普及 イーサネット(Ethernet)は、1970年代前半に米Xerox社の研究所で、現在見られるようなオフィス環境を目指す分散ネットワーク体系の一部として開発され誕生したLANの方式で、その名前は、古代に想像されていた光や電磁波を伝達する媒体の“エーテル”(ether)に由来しています。正式仕様は、DEC社、Intel社、Xerox社が共同でまとめ公開したことから、業界標準として急速に普及しました。また、その後わずかに仕様が拡張され、米国の工業規格IEEE802.3に採用されたため、現在の市販機器はこれに従って作られています。大変ポピュラーになった結果、安いものは数千円でPC用アダプタやHUBが入手でき、一般の家庭にさえ使われ始めています。 計装の世界でも、従来から使用されている上位計算機側のLANだけでなく、高速性、コスト、柔軟性などに着目し、従来RS-232/RS-485や各社専用バスで行われていた、装置間や装置と上位計算機の間の通信部分にもイーサネットが使われるようになり、たとえば、PLCやI/O装置などでイーサネットに接続可能な製品が出回り始めています。 イーサネットの概要 イーサネットでは、原理的には1本のケーブル上に、それぞれアダプタを内蔵する多数のコンピュータが接続されます。1つが送信すると、ほかのすべてのコンピュータのアダプタが受信して、それぞれ自分宛てならコンピュータに取込み、他宛てなら捨てます。 複数のコンピュータが同時に送信を始めると混信が起きるため、各送信側では次のような方式が採られています。 (1)送信者は、ケーブル上の信号(キャリア)を見て、他からの信号が流れていないのを確認してから送信を始める。 (2)送信中も、波形により他からの送信と衝突していないかどうかを監視する。もしも衝突している場合には、一定量の送信の後中断して、それぞれの送信者ごとに異なる、乱数によるランダムな時間を置いた後、(1)からやり直す。 この方式をCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access/Collision Detection)と言います。 ケーブルとしては、当初10BASE5(イエローケーブル)と呼ばれる太い同軸ケーブルが使われていました。しかし、その後10BASE2と呼ばれる細い同軸ケーブルが、さらには10BASE-Tと呼ばれる電話のツイストペア線が使えるようになり、工事の容易性からこれが現在の主流になっています。また速度も、当初の10Mbpsだけでなく100Mbpsが普及しつつあります。なお、ツイストペア線の場合には、通常4~16ポートをもつHUBと呼ばれる一種のリピータから、各コンピュータに放射状に配線されます。また、複数のHUBをつなげたり、HUBを基幹の同軸ケーブルにつなぐこともできます。 イーサネットは、オフィス環境でのネットワークを想定していたため、1台の故障が全体に影響を与えないこと、またオンラインのままで脱着や増設ができる柔軟性について配慮されています。 各アダプタには、IEEEとベンダで管理された、世界でただ1つの48ビットアドレスが割り当てられているため、アドレスを設定、変更することなく何処のLANに差し込んでも、そのまま使用することができます。加えて、アダプタは複数のグループアドレスも持つことができ、特定のグループに属する全アダプタ宛てに送信することができます。 イーサネットの上には、TCP/IP、NetWareを始めとする各種のプロトコルが同居して流れます。 MsysNet エム・システム技研の分散制御システムMsysNetにおいても、通信部最上位層のL-Busにはイーサネットが採用されています。 ■ *MsysNetはエム・システム技研の登録商標 です。 |
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