2007年6月号
エムエスツデー 2007年6月号

4点指示形
電力マルチメータ(形式:54U)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
近年、省エネに対する強い要請からエネルギー管理の重要性が叫ばれ、電力計測が果たす役割が重視されるようになってきました。
エム・システム技研では、このような動きに機敏に対応するため、「経済的で簡単に実現できる電力監視システム」を構築する、電力変換器の拡充に力を注いでいます。
今回は、2006年に発売したパネル埋込形電力マルチメータ(形式:53U)注1)に続き、このたび電力変換器シリーズに新たに加えた電力マルチメータ(形式:54U、図1)についてご紹介します。
主な機能と特長
2006年に発売した上記の53U は、96ミリ角、ユーロ端子接続、ストッパ取付けなどの特長をもち、主に海外のユーザーを対象に設計された製品であり、ご好評をいただいてきました。他方、国内のお客様からは、53U の機能はそのままで、国内の標準仕様に対応する製品がほしいとのご要望をいただき、110ミリ角、ネジ端子接続、ネジ取付け(ストッパ取付けも可能)の54Uを開発完了し、今回販売を開始します。
(1)測定要素
4点指示形 電力マルチメータ 54U は、1台で単相2線、単相3線、三相3線といったすべての配電方式に対応できます(図2)。
図2 54Uの結線図[拡大図]
また、電流、電圧、有効電力、無効電力、皮相電力、力率、周波数、有効電力量、無効電力量、高調波 注2)、電圧位相差といった基本測定項目から、ご希望に合わせてお客様が自由に必要項目を選択し、測定・表示いただけるフレキシブルで高機能なマルチメータです。 管理項目数は、上記諸項目に潮流演算 注3)、四象限演算 注4)、最大値、最小値、電力デマンド、カウント時間などの仕様を加え、合計450項目に及びます。また、表示項目の組み合わせも任意に行えます。
(2)LCD表示
54Uの主要機能である表示には、デザイン性に優れたLCDを採用し、バーグラフ1行、デジタル表示3行としました。
最下行は文字によるインフォメーション機能をもたせました。通常は積算値の表示を行っていますが、警報発生時には警報の内容を文字で点滅表示することによってオペレータに知らせます。
操作設定時には、操作項目を文字で表示し、取扱説明書を見なくても現在の状態が把握でき、複雑な機能を簡単に設定できるようにしました。
また、バーグラフは、任意の測定項目を表示でき、目盛の最小値、最大値を任意の値に設定可能です。警報の範囲も同時にバーグラフで表示できるようにしたため、一目で測定値と警報の範囲を実量で把握できるようにデザインしました。
輝度が4段階に調整できるLEDバックライト付き表示器を採用しているため、設置場所の明るさに伴う使用制限を受けることなく、柔軟に対応することができます。
また、無操作状態が設定した時間続くと、あらかじめ設定した表示に戻るホーム表示機能を設けました。表示項目を変更して特別な計測を行った後、そのまま放置して他の作業に移ることが許されるため、作業時間を節約できます。
(3)操作性
計測表示内容は、前面のボタンを押していくことで、電圧 → 電流 → 電力・・・のように簡単に切り換えられます。 その場合、間違って設定値(たとえば入力トランスのレシオなど)を変えてしまわないように、暗証番号による設定保護機能を備えています。この機能は、暗証番号が合致しないと設定メニューに入れなくするものです。
また当然ながら、動作中に電源が落ちた場合にも、設定パラメータや電力量などは正しく不揮発性メモリに蓄えられています。
(4)Modbus通信 、アナログ出力
Modbus通信かアナログ出力かを選択できます。
Modbus通信の特長は、計測したすべての項目の測定値をRS-485 Modbus通信で伝送でき、各電力供給ラインごとに配置した54U を上位でまとめて監視することによって、各種電力データの収集分析が容易に実現できることです。また、通信機能を使って警報値やバックライトの輝度の変更などの各種操作も可能です。
アナログ出力には4チャネルあり、各種の測定項目を任意に割り当てて出力できます。また MX・UNITシリーズ などでご好評をいただいている、立ち上げ時に出力を任意の値に設定できるループテスト機能をもっています。
(5)オープンコレクタ出力
オープンコレクタ出力は、電力量計測用のパルス出力と警報出力のいずれかに設定できます。また、その際パルスレートや警報設定値も自由に設定できます。なお、模擬出力機能を装備しているため、立ち上げ時に容易に接続を確認できます。
(6)接点信号入力
接点信号入力については、電力量計測におけるリセット用トリガ信号などの目的に設定できます。またModbus通信によって接点の状態をモニタできるため、負荷のON/OFF情報を測定データとともに伝送できます。
(7)赤外線通信、コンフィギュレータ
54Uは、赤外線通信アダプタ(形式:COP-IRU )に対応しています。このユニットを使用すれば、パソコンと54U 本体の間をケーブル接続することなく、54U の前面から非接触で設定できます(図3)。
ソフトウェアについては、コンフィギュレータソフトウェア(形式:53UCFG)(図4)をエム・システム技研のホームページ(https://www.m-system.co.jp/)からダウンロードしてお使いいただけます。このソフトウェアを使えば、パソコン上で電力マルチメータ53U、54U のパラメータを編集することができます。主な機能としては、機器パラメータの編集、書込み、読込み、パラメータのファイル管理、編集パラメータと機器パラメータの比較表示などがあります。COP-IRU を使えば、機器前面からでも同じ内容の設定は可能ですが、53UCFG によればはるかに短時間での処理が可能になります。
(8)その他
PC レコーダライトソフトウェア(形式:MSR128LU□)(図5)に対応しています。PCレコーダは市販のWindowsパソコンを利用した工業用記録計です。MSR128LU□ は、53U、54U 専用のソフトウェアです。53U、54U が収録したデータをパソコン上に波形表示、数値表示します。このソフトウェアもエム・システム技研のホームページからダウンロードしてお使いいただけます。
電気機械器具の容器に関する保護等級としてパネル面が IP50(IEC 60529 参照)に準拠していますから、塵埃の多い環境でも安心してご使用いただけます。
お わ り に
今回ご紹介した電力マルチメータ54U は、電力管理を行う上で極めて有用な製品であると確信しています。
なお、エム・システム技研は、今回ご紹介した54U 以外にもたくさんの電力計測関連製品を用意しています。エム・システム技研の電力変換器シリーズを省エネ実現のために、ぜひお役立てください。
注1)53U については、『エムエスツデー』
誌2006年9月号でご紹介しています。
注2)高調波は、電流・電圧について 31次高
調波まで測定可能です。
注3)送電、受電の演算。
注4)送電LEAD・LAG、受電LEAD・LAG
の演算。