2007年9月号
エムエスツデー 2007年9月号

リモートI/O上で動作する汎用コントローラ
(形式:R3RTU-VX)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
ご好評いただいているリモートI/O R3シリーズのベース上に、コントローラ機能を組み入れ可能にしてほしいというご要望を多数いただいてきました。
そこでエム・システム技研は、これらのご要望にお応えすべく、新形のコントローラ「VxWorks 搭載コントローラ(形式:R3RTU-VX )、図1」を開発しました。
この R3RTU-VX は、R3シリーズのベース上で動作する、高速性と高信頼性を兼ね備えた汎用の組み込み形コントローラです。R3シリーズの I/Oカードを用いたお客様のノウハウ(技術やソフトウェア資産など)をコントローラに組み込むことが可能であるため、手軽に最適な装置や設備を構築することができます。
したがって、従来やむを得ず汎用パソコンを用いて行ってきた監視・制御などのシステムにも応用可能です。
また、R3シリーズの各種カードを用いた信号の入出力も簡単に実現でき、少ない工数で効率のよいシステム開発を行えます。
さらに、安価なリモートI/O 上で動作するという点において、従来からある高価な産業用の組み込み CPU ユニットとも一線を隔した製品になっています。すなわち、コストパフォーマンスという観点から見ても、注目すべき製品であると考えています。
1.特 長
R3RTU-VX の主な特長は、以下に列挙するとおりです。
• R3シリーズのベース上で動作する、汎用のコントローラです。
• 産業用として最もポピュラーな OS の一つである「VxWorks」を搭載しています。
• C言語を用いたきめ細かいリアルタイム・アプリケーション・ソフトウェアの開発が可能です。
• Cコンパイラによってネイティブコードを生成するため、高速処理が実現できます。
• R3シリーズの豊富な入出力カードをすべて使用できます。
• 通信ポートとして Ethernet、RS-232-C を備えています。
• CFカードスロットをもっていて、DISK アクセスが可能です。
• 添付されている入出力カードアクセス関数を用いて、R3シリーズの各種入出力カードへ簡単にアクセスできます。
• R3RTU-VX に関する設定は、すべてCFカード上のテキストファイルを用いて行います。したがって、ほかに設定用のソフトウェアを必要としません。
• Modbus(TCP)のサーバ機能を標準装備しているため、LAN を経由してプログラムレスで R3シリーズの入出力カードへアクセスできます。
• CIFS(Common Internet File System)を搭載しているため、LAN を経由して Windows パソコンの Explorer から直接R3RTU-VX のCFカードへのアクセスが可能です。
表1に、R3RTU-VX の基本仕様を示します。
表1 R3RTU-VX 基本仕様
項 目 |
内 容 |
OS | VxWorks 5.5.1 |
CPU | XScale PXA255(400MHz) |
FROM | 2MB(OSブート用) |
SDRAM | 64MB |
Ethernet | 10BASE-T/100BASE-TX 自動切換え |
RS-232-C | 汎用(9ピン、Dサブコネクタ オス形 ) デバッグ用(ジャックコネクタ) |
CFカード | TYPE 3.3V |
LED | 前面に4つ(プログラムにて制御) |
その他 | RUN接点、ウォッチドッグタイマ |
2.システム構成例
R3RTU-VX を用いたシステムの構成例を図2 に示します。VxWorks はマルチタスクをサポートするリアルタイムOS であるため、1台の R3RTU-VX で複数のジョブを処理させるためのプログラムを簡潔に記述することができます。
以下に、簡単な一例ですが、R3RTU-VX を用いたシステムのタスク構成例について説明します。
この例では、2つのジョブ(電力監視処理・データ収集処理)を、1台の R3RTU-VX で実現しています(表2)。
表2 タスク構成例
ジョブ |
内 容 |
電力監視処理 | 電力入力カード(形式:R3-WT4)から定周期で電力データを読み出し、設定した値を超えた場合は、接点出力カード(形式:R3-DC16)から警報接点出力を出す。 |
データ収集処理 | 直流電圧入力カード(形式:R3-SV4)から定周期で電圧データを読み出し、それをCFカード上にファイルとして保存する。このファイルを PC から LAN 経由で読み出すことができる。 |
つまり、電力監視装置とデータ収集装置という2台分のジョブを1台の R3RTU-VX で処理することができ、大幅なコスト削減が実現します。
また、これらのデータを用いた特殊な演算機能を入れると、用途を限定したスペシャルコントローラにすることも可能です。
さらに、通信プログラムを設計すれば、複数台の R3RTU-VX をLANで接続してデータを共有することもできます。当然ながら汎用PC からもこれらのデータを参照できるため、常に演算状態をモニタリングすることも実現可能です。
このような電力監視、データ収集および通信処理を行うことは、以前からある組み込みCPUユニットと増設ボードを用いても可能だと思われます。しかし、R3RTU-VX は安価な産業用リモートI/O のベース上で動作するCPU ユニットであるため、ベースや電源、各種入出力カードまで含めて考えると、前者と比較してコストを大幅に低く抑えることができます。
また、豊富なR3シリーズの入出力カードに簡単にアクセスできるために、余計な調査を必要としません。したがって、開発期間の短縮および開発コストの低減が見込めます。
以上のように、R3RTU-VX は性能・価格両面においてメリットがあるため、新しい可能性を見出すことができるコントローラであると考えています。
お わ り に
VxWorks の信頼性・汎用性とR3シリーズの豊富な入出力カードとを組み合わせることによって、応用範囲は限りなく広がります。これらの条件を満足した R3RTU-VX は、VxWorks ならびにC言語に関する知識・経験をお持ちのお客様にとって、強力な武器になることでしょう。
すでに R3シリーズが設置されているシステムにも、空きスロットがあれば後から R3RTU-VX を追加することが可能です。つまり、R3シリーズを普通のリモートI/O から監視機能や制御機能を併せ持ったインテリジェントなリモートI/O へと、安価に機能アップすることができます。
以上のように、R3RTU-VX は多種多様な用途に用いることができるコントローラです。エム・システム技研では、この R3RTU-VX のご提供を通して、お客様の様々な課題解決のお役に立てれば幸いであると考えています。なお、R3RTU-VX ならびに R3シリーズの入出力カードに関するご意見、お問い合わせにつきましては、お気軽にエム・システム技研のホットラインまでご連絡願います。