2008年5月号
エムエスツデー 2008年5月号

高速PIDコントローラ
(形式:M2FC2)
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
エム・システム技研のコンパクト変換器「みにまるシリーズ」に、このたび、新たな形式の高速PIDコントローラ(形式:M2FC2)を追加しました(図1)。
M2FC2は低価格、高性能、小形ならびに多用途を目標に設計した高速PIDコントローラです。なお、M2FC2本体は、モニタ機能やチューニング機能をもたないブラインドコントローラであり、モニタやチューニングを行う場合には、M2FC2とPCを専用のコンフィギュレータ接続ケーブルで接続し、PCの画面上で行います。
以下に、M2FC2の主な特長をご紹介します。
1.基本機能
M2FC2は、制御入力(PV)、設定入力(SV)、制御出力(MV)を備え、以下に表される標準的なPID制御基本式にて演算します。
e:偏差、Kp:比例ゲイン、
Ki:積分ゲイン、Kd:微分ゲイン
TI :積分時間、TD:微分時間
TC:制御周期
また、不完全微分係数を設定することで、微分演算に一次遅れフィルタを入れて、実用上すぐれた特性をもった「実用・非干渉PID制御」注)を行うことができます。
表1 設定可能なパラメータ
PB |
比例帯、単位:%、レンジ:(0~2000)。 Kp=100/PB |
TI |
積分時間、単位:sec、レンジ:(0~1000)。TI=0のとき、積分なし Ki=100*TC/(PB*TI) |
TD |
微分時間、単位:msec、レンジ:(0~6)。TD=0のとき、微分なし Kd=100*TD/(PB*TC) |
TC |
制御周期、単位:msec、レンジ:(10~2000) |
Fdv |
不完全微分係数、レンジ:(0.01~1)。1のとき、理想微分 |
Fpv |
PVフィルタ係数、レンジ:(0.01~1)。1のとき、無フィルタ |
Fpv1 |
SVフィルタ係数、レンジ:(0.01~1)。1のとき、無フィルタ |
SV |
設定値、単位:%または指定スケール |
PV |
測定値、単位:%または指定スケール |
MV |
コントローラの出力値、単位:% |
MR |
マニュアルリセット出力、単位:% |
2.M2FC2とPCとの接続
M2FC2のモニタやチューニングに際しては、操作/監視ソフトウェア(M2FC2 PID Visual Control、形式:JXCON1)を使用します。本ソフトウェアは、エム・システム技研のホームページから無償でダウンロードできます。そして、専用のコンフィギュレータ接続ケーブル(形式:MCN-CONまたはCOP-US(USB対応))を使ってM2FC2とWindowsPCを接続することによって、PC画面上でM2FC2の諸設定作業が行えます。
図3に操作/監視ソフトウェア(JXCON1)の起動時表示画面を示します。JXCON1を通して行える基本的な機能としては、以下の項目が挙げられます。
(1)表示機能
PID制御パラメータ、制御周期、フィルタ係数などの各種パラメータおよび各種モードがグラフィカルに表示されます。
(2)設定機能
設定可能なパラメータを表1に示します。
(3)レコーダ画面表示
PV値、SV値、MV値のトレンドグラフを表示します(単位はパーセント値のみです)(図3)。
(4)印刷機能
操作/監視ソフトウェアの表示内容を、プリンタで印刷できます。なお印字品質は、プリンタの機能に依存します。
(5)ファイル機能
設定した各種パラメータをファイルに保存したり、ファイルから読み出したりすることができます。
(6)レンジ設定機能
入力信号の0%値と100%値、すなわちレンジを設定することができます。図3中の“Range”ボタンを押すと図4に示すレンジ設定画面が表示され、入出力信号のレンジ変更および入力変数(PV、SV)のスケール設定が行えます。スケール設定機能を用いると、PVやSVのバーグラフ表示でのスケールを、工業単位量などの理解しやすいスケールに変更することが可能です。これらの情報はファイルへセーブしたり、読み出したりできるため、極めて便利です。
(7)制御出力の手動操作機能
制御モードをマニュアルモードにすることにより、制御出力MVを手動で操作できます。制御モードをマニュアルモードにした後、MR(マニュアルリセット)の値を操作して、コントローラのMVを任意の値に設定できます。
(8)コールドスタートとホットスタート
電源投入時、また停電後の復電時におけるスタートモードとしては、コールドスタートとホットスタートの2種類から選択できます。それぞれの動作は以下のとおりです。
・ コールドスタート
制御出力を0%にした後、待機状態になります。待機状態ではM2FC2上のLEDは点滅しています。オペレータが介入して、はじめて制御を開始できます。待機状態では復電時モード、PID動作モードおよびRemote/Localモードを変更できます。
・ ホットスタート
不揮発性メモリに保存された制御パラメータおよび制御(Auto/Man)モードで制御を開始し、制御状態になります。制御状態では、M2FC2上のLEDは連続点灯になります。
(9)その他
Remote/Localモード切替スイッチを備えています。リモート(REM)では、M2FC2の設定入力(SV)で制御し、ローカル(LOCAL)では、JXCON1から手動設定したSV値で制御します。また、PID動作(正/逆)切替スイッチも備えています。正(POS)ならば、PVがSVより上がるとMVを上げる制御傾向をとり、逆(NEG)ならば、PVがSVより上がるとMVが下がる制御傾向になります。
おわりに
今回は,みにまるシリーズに新たに加わった高速PIDコントローラ(M2FC2)をご紹介しました。みにまるシリーズの特長であるコンパクトなプラグイン形構造の利便性を継承する一方、高度で複雑な部分は排除して機能を絞り込んだ低価格で簡便性を備えた本ブラインドコントローラが、お客様のお役に立つ製品になることを願っています。
今後もお客様の様々なご要望にお応えし、ご使用目的にあった製品をご提供して参りたいと考えています。ご意見やご要望など、お気軽にエム・システム技研のホットラインまでお寄せください。
注)『エムエスツデー』誌2004年10月号の「PID制御のお話(第9回)」参照。
*みにまるは、(株)エム・システム技研の登録商標です。