2008年8月号
エムエスツデー 2008年8月号

超薄形変換器M3S・UNITシリーズに
好評のPCスペック形を追加
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
ご好評いただいている超薄形変換器M3S・UNITシリーズのラインアップに、このたびPCスペック形の直流入力変換器(形式:M3SXV)、カップル変換器(形式:M3SXT)、測温抵抗体変換器(形式:M3SXR)、ポテンショメータ変換器(形式:M3SXM)の4機種と、アナログ形の絶縁2出力 直流入力変換器(形式:M3SWVS)を新たに加えました。これらの機種は、幅わずか12mmの超薄形にもかかわらず、直流電源(DC24V)用や交流電源(AC100~240V)用のほかに、交直両用電源(AC100~240V/DC 24~240V)用も用意しており、さらにEMC指令(2004/108/EC)にも適合しています。
図1は上記PCスペック形に共通の外観です。ケース前面には電源表示ランプ、状態表示ランプ、コンフィギュレータ接続用ジャック、出力設定用ディップスイッチを備えています。各変換器の主な仕様については表1をご覧ください。
これらのPCスペック形では、超薄形変換器M3S・UNIT用 PCコンフィギュレータソフトウェア(形式:M3SCFG)を用いることによって、PC画面を見ながら諸設定が行えます注1)。
本稿では、M3S・UNITシリーズのPCスペック形における各種の機能と特長、M3SCFGの設定画面などについてご紹介します。
表1 超薄形変換器M3S・UNITシリーズ 新ラインアップ機種一覧
製品名称 /形式 |
入力 | 第1出力 | 第2出力 | 電源 | 設定 方法 |
対応 規格 |
PCスペック形 | ||||||
直流入力 変換器 M3SXV |
DC 0~50mA DC −1000~ +1000mV DC −10~+10V |
DC 0~20mA DC −5~+5V DC −10~+10V |
− | DC 24V AC 100~240V AC 100~240V/ DC 24~240V (交直共用) |
PC (ディップスイッチとの組合せですべての入出力を設定可能) |
CE |
カップル 変換器 M3SXT |
熱電対 (PR)、K、E、 J、T、BR、S、 N その他 |
|||||
測温抵抗体 変換器 M3SXR |
JPt 100(JIS '89)、 Pt 100(JIS '89)、 Pt 100(JIS '97、 IEC)、 Pt 50Ω(JIS '81)、 Pt 1000、 Cu 10 その他 |
|||||
ポテンショ メータ 変換器 M3SXM |
全抵抗値 100~5000Ω |
|||||
アナログ形 | ||||||
絶縁2出力 直流入力 変換器 M3SWVS |
入力範囲(電流) :DC 0~70mA 入力範囲(電圧) :DC −30~+30V スパン(電流) :DC 0.1~70mA スパン(電圧) :DC 0.1~70V 入力バイアス :スパンの1.5倍以下 |
DC 4~20mA DC 0~20mA DC 0~5V DC 1~5V |
DC 4~20mA DC 0~20mA DC 0~5V DC 1~5V |
DC 24V AC 100~240V AC 100~240V/ DC 24~240V (交直共用) |
前面のトリマ | CE |
1.自由度の高い設定
PCスペック形については、入出力の種類とレンジをお客様が自由に設定いただけます。まず、出力の種類に合わせてケース前面にあるディップスイッチを設定します。設定方法については、本体側面に表示されています(図2)。
次に、図3に示すM3SCFGの入出力設定画面で基本設定タブを使って入力と出力それぞれの種類を選択し、それぞれについて0%と100%を入力するだけです。
設定可能な項目は、入出力だけではありません。リニアライズ機能も備え、M3SXVとM3SXMでは任意のユーザー指定テーブルを最大101ポイントまで設定できます。各ポイントについては、入出力を「%」で設定します。設定したリニアライズテーブルをグラフとして確認できるため視覚的チェックが容易に行えます。また、ファイルへの保存や読み出しも可能です。図4には、5点のリニアライズテーブルを設定し、その有様をグラフで表示した例を挙げています。
M3SXTとM3SXRの入力については、表1に示すとおり多種類のセンサに対応しています。しかしながら世の中にはさらに多種多様な熱電対や測温抵抗体が用いられているため、対応する入力がコード表になく残念な思いをされたお客様もいらっしゃるかと思います。しかしご安心ください。先にご紹介したリニアライズ機能はM3SXTとM3SXRにも備わっていて、それを使用されれば任意の入力に対応できます。
設定手順を挙げれば、まず開始温度と温度ステップ、温度ポイント数を設定します。次に各温度における起電力値〔mV〕または抵抗値〔Ω〕を設定するだけです。それぞれのテーブルは最大で300点まで設定可能です。
2.便利な機能やその使用方法
M3SCFGはトレンドグラフ機能を装備していて、入力の変化を視覚的に確認できるためメンテナンスの際に便利です。また入力の状態にかかわらず、任意の値を出力できるループテスト機能も備えています(図5)。
M3SCFGを用いることによって、多くの変換器に対して同じ設定を行うことも簡単に実行できます。その方法を以下にご紹介します。
図3の画面右側にあるファイル設定エリアにて、基本項目や入出力のゼロスパン微調整、リニアライザを設定します。次に設定したい変換器を接続して通信状態にした後、画面中央のダウンロードボタンをクリックすることで設定完了となります。そのあとは、設定したい変換器を順次接続してダウンロードボタンを押すという行程をくり返すだけで、複数の変換器に同一の設定を行うことが可能です。このファイル設定エリアの内容はファイルへの保存や読み出しができるため、メンテナンス時や設定時のバックアップなどとしても役立ちます。
また、機器設定エリアに表示された接続状態にある変換器の設定内容を、画面中央のアップロードボタンをクリックすることでも、ファイル設定エリアに反映させられます。さらに、コンペア機能を使用すると、接続されている機器の設定状態とファイル設定の比較結果を表示できるため、設定状態の確認も容易に行えます。図6に示すようにパラメータが異なる箇所は赤色に表示され、その個数も画面左下に表示されるため、設定内容の相違は一目瞭然です。
3.環境保全
PCスペック形には3種類の電源用を用意しています。たとえばDC 24V電源の場合、消費電力は最大でわずか0.5W程度と低いため、省電力に役立ち、環境負荷も少なくできます。
エム・システム技研では、これら省電力の製品やシンプルで経済的な電力監視システムのご提案など、環境保全に積極的に取り組んでいます注2)。
おわりに
PCスペック形では、1つの機器において多種類の入力・出力条件を自由に設定できます。また、従来複雑であった設定項目についてもPC画面を見ながら容易に設定できるという特長をもっています。
今後も、便利で使い易い製品の開発に努めて参ります。ご要望、ご意見をお気軽にエム・システム技研のホットラインまでお聞かせください。
注1)コンフィギュレータソフトウェアはエム・システム技研のホームページからダウンロードできます。M3S・UNITとPCとの接続には、専用のコンフィギュレータ接続ケーブル(形式:MCN-CONまたはCOP-US)が必要です。
注2)エム・システム技研の環境保全への取組については『エムエスツデー』誌2008年5月号の「計装豆知識」でご紹介しています。